最新記事

日本経済

コロナ禍で苦境に立つ日本の航空会社 政府は側面支援、直接救済にはなお距離

2020年10月24日(土)11時01分

資本注入は「最後の砦」

航空会社の政府支援を巡っては、欧州が先行し、より直接的な措置に乗り出している、ルフトハンザが90億ユーロ(約1兆1000億円)の政府救済案を受け入れたほか、同様に苦境に立つイタリア航空大手アリタリアは6月に完全国有化された。エールフランスKLM傘下のエールフランス、KLMはともにフランス、オランダ両政府の金融支援を受けた。

日本の政府や与党内では、そこまでの声はまだ聞かれない。国境をまたいだフライトが多い欧州の航空会社と違い、日本は国内線も主軸。政府の観光支援策「GoToトラベル」などで人の移動が再開し、ANA、JALとも国内線は復調の兆しがみられる。GoToトラベルは来年1月末で終了する予定だが、年内にまとめる経済対策で延長措置される可能性がある。

また、金融機関が健全性を維持しており、航空会社を支えるだけの体力がある。ANAは今月27日、事業構造改革とともに主力の三井住友銀行など5行から劣後ローンで4000億円を調達することを発表する見通しだ。

「株価が戻り歩調となり、幸いにも金融機関が保有する株式の減損処理に追われるなどの事態に至っていない」と、前出の閣僚経験者は言う。政府による航空会社への直接的な資本注入は「金融機関の体力があるうちは必要ないのでは」と指摘する。

しかし、コロナ禍がどこまで長引くかは分からない。日本政府はアジアを中心に徐々に外国との往来制限を緩和しつつあるが、欧米は感染症の流行が収まる気配がなく、国際線の本格的な再開はめどが立たない。

与党内からは「今は会社が矢面に立ってやっているが、コロナの影響が来春まで続くようだと深刻度が増す」(前出の中堅議員)との声が聞かれる。それでも、今のところは「直接注入は『最後の砦』」と、航空業界に精通する与党議員は言う。

「『自助、共助』で需要の回復を待ちながら、欧米よりは影響の小さいアジアの需要をどう取り込むかや新規事業などの中期的戦略を描く選択肢もあるのではないか」と、別の与党関係者は言う。

(杉山健太郎、梶本哲史、竹本能文、中川泉 編集:山口貴也、久保信博)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国共産党化する日本政治
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ


ニューズウィーク日本版 日本人が知らない AI金融の最前線
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月3号(2月25日発売)は「日本人が知らない AI金融の最前線」特集。フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに[PLUS]広がるAIエージェント

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豪CPI、1月は前月比0.4%上昇 コアインフレ加

ビジネス

1月企業向けサービス価格、前年比2.6%上昇 前月

ワールド

中国春節の9連休、国内旅行と消費支出を押し上げ

ビジネス

グーグル、データセンター向けに米電力会社2社と契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    3頭のクマがスキー客を猛追...ゲレンデで撮影された…
  • 5
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    「IKEAも動いた...」ネグレクトされた子猿パンチと「…
  • 8
    「極めて危険」──ゼレンスキー、ロシアにおける北朝…
  • 9
    IMF、日本政府に消費減税を避けるよう要請...「財政…
  • 10
    武士はロマンで戦ったわけではない...命を懸けた「損…
  • 1
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より日本の「100%就職率」を選ぶ若者たち
  • 2
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 3
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く高齢期の「4つの覚悟」
  • 4
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
  • 5
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 6
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 7
    海外(特に日本)移住したい中国人が増えている理由.…
  • 8
    100万人が死傷、街には戦場帰りの元囚人兵...出口な…
  • 9
    ロシアに蔓延する「戦争疲れ」がプーチンの立場を揺…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中