バイデン大統領誕生でもトランプによる対中関税は継続か 難しい利害調整
これに対しバイデン氏は、自分は通商障壁を使うことにたじろがないが、そうするのは意味があるときだと反撃してきた。5月には全米鉄鋼労組に向けて「必要なときには関税を使う。しかし自分とトランプ氏が違うのは、自分にはこけおどしだけのためでなく、結果を勝ち取るために関税を使うための戦略、つまりプランがあることだ」と表明した。鉄鋼とアルミの関税については、中国に主に集中する生産過剰への世界的な抑制策が交渉されるようになるまでは、継続させるとも強調した。
バイデン氏が掲げる「すべてメード・イン・アメリカ」の経済プランが示すのは、気候変動問題の目標が未達な国への排出量に基づく制裁関税だ。これは地球温暖化問題で米国による解決主導を強く望む進歩派を喜ばせる可能性がある。
プランにはWTOの改革の約束、中国など他国による不公正な慣行に対する「積極的な通商措置の行使」も盛り込まれている。この対象には為替操作、ダンピング輸出、国営企業の待遇、不公正な補助金などが含まれる。
通商問題で同盟国と和解
バイデン陣営の政策顧問のジェフ・プレスコット氏によると、バイデン氏がトランプ氏と違いを示すもう一つの点は、中国への最善の対処方法について同盟国に相談することだ。欧州や日本などの同盟国と協調すれば、中国問題を巡って世界経済の大きな部分に影響力を与えることができるとし、具体的には非市場的な慣行の抑制やWTO規則の改定を挙げた。
トランプ氏へのブルーカラー労働者の支持は、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシンの激戦州で引き続き多い。しかし、バイデン氏は米国最大労組に支持されている。
米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)のリチャード・トラカム会長は3日、バイデン氏について、新型コロナの中で労働者の安全を守るための規則を導入し、不可欠なサプライチェーンの米国回帰を促すための税制優遇を活用し、大規模なインフラ投資にも積極的で、国内での強力な「バイ・アメリカン」(米国製品購入)措置を義務づけてくれると確信していると述べた。トランプ氏については「広げた大風呂敷に見合ったことを実現していない」とした。
コンサルタント会社ユーラシア・グループのマネージングディレクター、ジョン・リーバー氏によると、バイデン氏が提案していることはトランプ氏とは違った経済ナショナリズムであり、この目標は「対中関税の引き下げとはまったく矛盾する」という。
それでもバイデン陣営の顧問陣は、政策決定がどうなろうとも、トランプ政権前の通商を巡るコンセンサス、つまりグローバル化をうたいながら、通商障壁の継続的な縮小を米政府に米企業が訴えてきたような状況には戻ることはないと語る。
顧問の1人は「国際的な経済政策上の最終目標は、多国籍企業の事業環境を安全にすることではなく、米国内の雇用と中流層の問題と国内経済の強化が基本だ、との一種の認識がある」と話した。
(David Lawder記者、Trevor Hunnicutt記者)
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