最新記事

医療

公益か利益か、新型コロナ治療薬レムデシビルの価格でギリアドがジレンマ 

2020年5月9日(土)09時07分

新型コロナウイルス感染症で、今のところ唯一効果が証明されたとされる治療薬「レムデシビル」を製造する米ギリアド・サイエンシズが、その価格設定を巡ってジレンマに直面している。写真はカリフォルニア州オーシャンサイドで、4月29日撮影(2020年 ロイター/Mike Blake)

新型コロナウイルス感染症で、今のところ唯一効果が証明されたとされる治療薬「レムデシビル」を製造する米ギリアド・サイエンシズが、その価格設定を巡ってジレンマに直面している。

同社は2013年、C型慢性肝炎治療薬「ソバルディ」を1錠1000ドルで導入して不評を買った。同じ価格帯の既存薬に比べて効果が格段に高い薬ではあったが、それでも価格が不当に高いとの議論が全米で巻き起こり、以来、製薬業界は批判払拭に努めてきた。

米当局が新型コロナ患者についてレムデシビルの緊急使用を認めたことから、ギリアドは再び注目の的になった。

アナリストの推計では、レムデシビルの売上高は来年、世界で7億5000万ドル以上に達し、新型コロナの世界的大流行が続けば22年には11億ドルとなる可能性がある。しかしギリアドその他の製薬会社は、世界的な健康危機に便乗して儲けているとのイメージが広がるのを避ける必要がありそうだ。

コンサルタント会社ZSアソシエーツのエド・シューンベルド氏は「製薬会社にとって(業界イメージを向上させる)絶好の機会だ。薬価は圧倒的に悪い意味を浴びてきた」と言う。

ギリアドのダニエル・オデイ最高経営責任者(CEO)は慎重に事を進めている。同社は、米政府が全米の病院に配布するレムデシビルについて、少なくとも14万人分を寄付する方針だ。

5月1日のトランプ大統領との会合でオデイ氏は、レムデシビルが必要な患者に行き渡るようにすると約束。同社はまた、世界中の生産態勢を強化して年末までに100万人以上、必要なら来年末までには数百万人分を供給できるようにする狙いだ。

同社は価格設定についての計画は開示していない。

オデイ氏は最近の投資家向け電話会議で「今回のことは、業界の評判(向上)に役立つはずだと考えている」と話した。


【関連記事】
・新型コロナ規制緩和の韓国、梨泰院のクラブでクラスター発生
・コロナ独自路線のスウェーデン、死者3000人突破に当局の科学者「恐ろしい」
・東京都、新型コロナウイルス新規感染39人確認 7日ぶり増加、累計4810人
・トランプ、新型コロナ検査で再び陰性 ホワイトハウスの世話係が感染

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、つなぎ予算案に署名 政府機関閉鎖が解除

ビジネス

ガルフストリーム、中国のビジネスジェット需要は貿易

ワールド

ベネズエラ国債、大規模債務再編なら大幅値上がりか=

ワールド

韓国外相、ルビオ氏に米韓首脳合意文書の公開要請=聯
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 6
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中