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便乗商法

新型コロナウイルス、パンデミックの陰で暗躍「マスクブローカー」 粗悪品の温床にも

2020年4月5日(日)10時04分

在庫確保には苦労

テキサス州ヒューストンのポンプ部品企業のオーナー、ジェイク・メイ氏は、「業界大手3M製のマスク2種類、計800万枚の在庫あり、1枚4.10─4.20ドルで販売」という内容を、ビジネス交流サイトのリンクトインに投稿した。

「お得な価格、迅速に納品」と約束しているが、あるインタビューでは、在庫の確保に苦労していると語っている。

ブローカーは皆、仕入れ先や顧客について明らかにしておらず、彼らが本当に膨大な隠れ在庫にアクセスできるのか、ロイターでは裏付けを得ることができなかった。どのブローカーも、基準価格を決めているのはメーカーであり、最近の価格上昇のほとんどはメーカーの責任によるものだとしている。

コルフェージ氏は、彼が見つけたマスクは品質が高く(中国からの調達ではないという)、米食品医薬品局(FDA)の認証を得たものだという。また、同氏は便乗値上げをしておらず、むしろ他のブローカーに比べて手数料もかなり低いと述べている。

確かにロイターはコルフェージ氏よりも高価格のマスクを確認している。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、マスク1枚あたりの価格が85セントから7ドルに上昇したと指摘している。

3月23日、トランプ米大統領は医療用品の買いだめと便乗値上げを禁じる大統領令に署名し、バー司法長官は、そうした動きを調査するための全国規模のタスクフォースを立ち上げたことを明らかにしている。

「ステルス」企業、偽造品販売、投機筋

大手メーカーの3M(ミネソタ州セントポール)や、医療機関向けサプライヤー大手のプレミア(ノースカロライナ州シャーロット)によると、一部のマスクブローカーは偽造品や品質基準を満たさない類似品を販売しているようだという。

プレミア幹部のショーン・パウエル氏によれば、同社は顧客に対し、即席ブローカーに関する警告を発したという。それでも一部の納入先は、幸運を祈ってこうしたブローカーに発注しているという。

「我々のサ流通経路がいかに絶望的な状況になっているかを実証している」と、パウエル氏は言う。「病院では、品質に問題のあるマスクがあるのと、まったくマスクがないのと、どちらがマシかを見極めようとしている」

ある大手流通企業によれば、価格高騰による一儲けを狙うメーカーその他の企業によって、3M製品も正規ルートを外れて流通しつつあるという。ニューヨーク市ブルックリンを拠点に、医療関連製品を供給するディールメド社のマイケル・アインホーン社長は、「どのようにして商品が正規のルートから消えているのか、それが問題だ」と話す。「流通に何か根本的な間違いがある」

アインホーン氏は、正規の販売代理店でさえ確保できない製品を「膨大な数の素人が」手に入れているようだと言う。「彼らはそれを別の人間に転売し、またそれが転売される。病院に届くまでの間に10人もの人間が介在し、利益を貪っている」

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