最新記事

日本経済

政府、景気判断を大幅下方修正「新型コロナウイルスにより厳しい状況」 「回復」6年9カ月ぶり削除

2020年3月26日(木)18時19分

政府は26日、3月の月例経済報告で景気の総括判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により足元で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」とし、大幅に下方修正した。写真は大阪の道頓堀。3月14日撮影(2020年 ロイター/Edgard Garrido)

政府は26日、3月の月例経済報告で景気の総括判断を「新型コロナウイルス感染症の影響により足元で大幅に下押しされており、厳しい状況にある」とし、大幅に下方修正した。各国の感染拡大防止策を受けた経済活動の収縮を反映。2013年7月以来6年9カ月ぶりに「回復」の文言が削除され、安倍政権の金看板ともいえる景気回復が途切れた格好だ。

項目別では全14項目のうち7つを下方修正。「消費」や「設備投資」などのほか、政権が景気回復の証としてきた「雇用」も判断を引き下げた。7項目もの下方修正は、個別項目の景気判断を公表し始めた01年2月以来初めて。

2月の景気判断は「輸出が弱含む中で、製造業を中心に弱さが一段増した状態が続いているものの、緩やかに回復している」だった。

リーマンと震災合わせた影響の可能性


内閣府の2月景気ウオッチャー調査では、判断指数は現状・先行きともに東日本大震災時やリーマン・ショック時の水準近くまで急低下した。

内閣府幹部は今回の、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する経済的ショックについて「震災とリーマンを合わせた大きさになるかもしれない」と指摘している。

先行きについても「感染症の影響による厳しい状況が続く」とし、「感染症が内外経済をさらに下振れさせるリスクに十分注意する必要がある」と指摘。また、株価暴落を受けて「金融資本市場の変動などの影響を注視する必要がある」と警戒感を示した。

求人が急減、雇用環境の悪化は不可避


政府は昨年以降、生産・輸出の悪化が続いても、人手不足を背景にした良好な雇用環境をベースに景気は緩やかな回復を続けていると強調してきた。

しかし、今回の報告では、経済の急激な収縮により雇用環境の悪化は不可避と判断した。ハローワークの有効求人数は昨年10月以降、前年割れが続いているが、その減少幅が1月の7.3%から、2月12.4%、3月16.1%と急拡大している点を懸念している。「雇用情勢」の判断は、2月の「改善している」から「改善してきたが、感染症の影響がみられる」に下方修正した。

他の項目では、「個人消費」を「持ち直している」から「感染症の影響により、このところ弱い動きとなっている」に引き下げた。3月上旬に各新幹線の利用者数が前年比5割程度減少したことや、沖縄・九州・近畿・南関東・北海道の宿泊施設の稼働率が5割程度減少しこと、パブ・居酒屋、百貨店の売り上げ減少などを反映させた。

「設備投資」は「おおむね横ばい」とし、2月時点での「緩やかな増加傾向にあるものの、一部に弱さがみられる」から引き下げた。構築物投資の減少などを反映した。

「輸入」は、中国からの部品供給の減少を踏まえ、「弱含んでいる」から「減少している」に引き下げた。

「企業収益」は「製造業を中心に弱含んでいる」と判断し、2月時点での「高い水準にあるものの」との文言を切り取った。東京商工リサーチの調査で、2月の売上高が7割の企業で前年割れとなり、2割の企業では20%も以上落ち込んでいることを重視した。

「業況判断」も、従来の「引き続き慎重さが増している」から「感染症の影響により、悪化している」に引き下げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国のイラン産原油輸入、6月に急増 紛争前の輸送加

ワールド

トランプ氏の出生地主義見直す大統領令、米最高裁が全

ワールド

プーチン氏、ウクライナと協議継続の用意表明 交渉担

ワールド

イスラエル軍法務総監、ガザ配給所の発砲巡り戦犯調査
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 2
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急所」とは
  • 3
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 4
    富裕層が「流出する国」、中国を抜いた1位は...「金…
  • 5
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 6
    伊藤博文を暗殺した安重根が主人公の『ハルビン』は…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    中国軍事大学が特殊任務向け「蚊サイズ」ドローンを…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 10
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中