最新記事

資源

なぜサントリーは大阪市で家庭ゴミ回収を始めたのか? プラゴミ深刻化の影響とは

2019年12月25日(水)18時00分
兵頭 輝夏(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載

サントリーのグループ会社で、缶、瓶、ペットボトルの再資源化処理を行う工場「リサイクル・プラザJB」(埼玉県さいたま市)(記者撮影)

サントリーホールディングスは今年10月から、大阪市鶴見区内でペットボトルを回収する実験的な取り組みを始めた。

大阪市は環境省の「プラスチックの資源循環に関する先進的モデル事業」の対象となっている。サントリーはその事業に参加する一企業として、このプロジェクトに参加しているのだ。

現時点では、サントリーの子会社である「サントリーMONOZUKURIエキスパート」と神戸市の古紙回収業・マツダの2社が参加している。

ゴミの中のペットボトル、「資源」として収集

11月下旬の平日、鶴見区に実際に足を運んでみると、閑静な住宅街の道沿いにゴミ袋が並んでいる。その中に、すべてキャップが外され、ラベルが1つ残らず剥がされたペットボトルが仕分けされた袋がたくさん並ぶ。「暑い時期はもっと量があった。今でもよく集まっている」(大阪市環境局の松山智徳氏)という。

今回のプロジェクトは、これまで大阪市が行っていた各家庭からのゴミ回収の一部を民間の事業者に委託していることが特徴だ。さらに、従来は回収したペットボトルを「廃棄物」として自治体が費用を負担しリサイクルしていたが、今回の新しい仕組みではペットボトルをペットボトルにリサイクルするために、価値のある資源として取り扱う点が新しい。

地域住民は、ペットボトルの清潔度に応じてサントリーから対価を受け取る。例えば鶴見区緑では1キロ当たり5円、年間で1万~1.5万円になる見込みという。一方、サントリーは集めたペットボトルを大阪市内などで減容化し、栃木県の再資源化事業者に売却する。その後、ペットボトルの原型(プリフォーム、ペットボトルとして膨らませる前段階の中間製品)を全数買い戻している。

大阪市としては、ペットボトルの回収事業を民間企業に委託することで、費用をかけずに資源の有効活用ができる利点がある。地域住民はプラスチックの有効活用に貢献できるうえ、事業者から得た利益を小学校の放課後教室などの地域活動に充てることができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

スイス中銀、ゼロ金利維持でマイナス金利回避の見込み

ワールド

マクロン仏大統領、中国主席と会談 大規模なビジネス

ワールド

米議員、戦争権限決議案提出 「近く」ベネズエラ攻撃

ワールド

EU、リサイクル可能な電池・レアアース廃棄物の輸出
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中