最新記事

貿易戦争

米通商代表ライトハイザーの交渉にほころび? 合意成果に与党から批判も

2019年12月25日(水)08時33分

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、米中貿易協議の「第1段階」合意と米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の修正合意を12月第2週にまとめ上げたことで、平和で静かなクリスマス休暇を過ごせると楽しみにしていただろう。写真はメキシコ市で10日撮影(2019年 ロイター/Carlos Jasso)

米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、米中貿易協議の「第1段階」合意と米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の修正合意を12月第2週にまとめ上げたことで、平和で静かなクリスマス休暇を過ごせると楽しみにしていただろう。ところが実際には、USMCAを巡るメキシコ政府の誤解を正す作業に追われ、これらの合意内容に対して与党・共和党議員から批判を浴びる事態が起きている。

保守系の米紙ウォールストリート・ジャーナルは論説で、トランプ政権はUSMCA修正を野党・民主党に同意してもらうために彼らの要求をのむ「政治取引」を強いられたと指摘。また元USTR高官や投資アナリストは、米中の第1段階合意が期待に程遠かったと一蹴した。

72歳のライトハイザー氏は、党派で極端に分断された今日のワシントンではある意味、まれな存在。その精力的な働きぶりは時に民主党側からも、不承不承ながら賞賛されてきた。もちろん、大統領が常に敬意をもって耳を傾ける人物でもある。

北米自由貿易協定(NAFTA)に代わるUSMCAと、米中貿易合意は、トランプ政権にとっていわば2大優先課題だった以上、同じ週に話がまとまったことは政治宣伝の面では大勝利だった。

ところが合意を引き寄せる取り組みは、当初の予想よりも長くかかり、思っていたより手ごわくもあった。そして、さらなる疑問も生まれている。

それはライトハイザー氏の「出し惜しみ」する交渉スタイルが原因の1つだとの声が聞かれる。議会関係者や元米政府高官の取材に基づくと、常に入念な準備を欠かさないとはいえ、傲慢(ごうまん)に見える場合があり、人に任せるのを嫌うというのが同氏に下された評価だ。

下院歳入委員会のニール委員長(民主党)は記者団に、ライトハイザー氏は怒りとともに電話をたたき切る傾向があるとこぼした。

あうんの呼吸

トランプ政権は米国が長い間、通商面で他国に利用されてきたと強く信じており、USTR代表は主な貿易相手との関係をリセットする任務を託された。そしてライトハイザー氏はそうした仕事を何の違和感もなく引き受けた。

米国の労働者や企業に有利なように世界の貿易環境を変えてしまおうとする「米国第一」主義を掲げるという点で、トランプ大統領とジョージタウン大卒のライトハイザー氏の間に意見の違いはほとんど見当たらない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、14日から米製品への関税10%に引き下げ 9

ワールド

米・サウジ経済協定に署名、米製武器の大規模購入も 

ワールド

ロシア、ウクライナと真剣な協議の用意=外務次官

ワールド

米政権のウィットコフ・ケロッグ特使、15日にトルコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因は農薬と地下水か?【最新研究】
  • 3
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映った「殺気」
  • 4
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 5
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 6
    「がっかり」「私なら別れる」...マラソン大会で恋人…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    トランプは勝ったつもりでいるが...米ウ鉱物資源協定…
  • 9
    「出直し」韓国大統領選で、与党の候補者選びが大分…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 6
    シャーロット王女の「親指グッ」が話題に...弟ルイ王…
  • 7
    ゴルフ場の近隣住民に「パーキンソン病」多発...原因…
  • 8
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 9
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中