最新記事

キャッシュレス決済

日本よりキャッシュレス進む東南アジア 屋台から配車サービスまで競争過熱

2019年10月23日(水)12時11分

配車アプリからスタートして統合アプリに事業を拡大したグラブやゴジェクなど、東南アジア地域における最大手のeウォレット事業者は、主要な決済手段になることによって消費者を自社のネットワークに囲い込み、もっと高収益のサービスを提供できるようになると期待している。中国でアリババやテンセントが開拓してきたビジネスモデルだ。

グラブのミン・マー社長はロイターの取材に対し、「我々の決済ビジネスがこれだけ成功している理由の1つは、オフラインであれオンラインであれ、あるいはオンデマンドであれ、最大規模の店舗ネットワークを構築するという非常に意欲的な戦略を持っていたからだ」と語った。

既存のビジネスへの付加的なサービスとしてeウォレットを活用することをめざす企業もある。エアアジアのeウォレット「ビッグペイ」には、エアアジアを利用する際の条件が有利になる特典があり、やはり主要な決済手段になることが期待されている。

テンセント、アリババ及びその系列企業は、主として東南アジアで自社のウォレットを利用する中国人旅行者をターゲットとしているものの、同地域内のほぼ全ての市場において地元のeウォレット事業にも投資している。

グラブは、東南アジアでは、主要6カ国において電子マネー決済を行うライセンスを保有しているのは同社だけであり、域内では最も広い範囲にアプローチできる立場にあると述べている。

疑問符が付くビジネスモデルも

だが一部の識者のあいだには、懐疑的な見方も依然として残っている。

ベンチャーキャピタル企業セントのパートナー、ドミトリー・レビット氏は、多くのeウォレット事業のビジネスモデルを、1)多くの顧客を獲得し、そのデータを握っている、2)成功の可能性は疑問、3)非常に高い利益率を実現している──という3つに分類する。セントは複数の決済処理企業に投資しているが、eウォレット事業からは距離を置いている。

ゴジェクの決済プラットホーム「ゴーペイ」のアルディ・ハリオプラトモCEOは、他のeウォレットや既存企業との競争については心配していない、と話す。

「ドライバーを銀行に結びつける決済事業者になることで、十分な利益率を確保できている。競合他社や銀行からの脅威にばかり気を取られていると、パイの大きさには限りがあるような気がしてくる」とハリオプラトモ氏は言う。そして同氏は「実際には、インドネシアではパイは大きくなっている」と付け加えた。

(翻訳:エァクレーレン)

[Phuong Nguyen Alun John Anshuman Daga

[ホーチミンシティ/香港/シンガポール ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191029issue_cover200.jpg
※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中