アマゾンが支配する自動化社会というディストピア

REPLACEABLE YOU

2019年7月5日(金)16時15分
エレン・ルペル・シェル(ジャーナリスト)

データは人間の経験や直感の代わりもできる。オンライン・ショッピングやソーシャルメディアのサイトは私たちの好みを「学習」し、その情報を使って評価を行い、私たちの決定や行動に影響を与える。かつては人間にしかできないと思われた仕事でも、どんどん機械のほうが上手になっている。

「コンピューターは見ることも聞くこともでき、人間以上に人の顔を識別できる」と、ライス大学のバルディは言う。「機械は人間の世界をほんの数年前よりずっとよく理解できるようになった。人間の脳で、機械が模倣できないものは何も見つかっていない」

一方で、コーネル大学のコンピューター科学者バート・セルマンは、現実の世界をコンピューターが理解できるように翻訳する「知識表現」の専門家で、まだコンピューターは人間と同等の能力に達していないと考える。コンピューターには「常識」がないし、言語の深い意味を把握できず、時に間違った方向に進んでしまう。ただし、そんな欠陥は時間が解決するはずで、「あと15年か20年で機械は人間の知性に追い付く」だろうとセルマンは言う。

それに、ロボットが完璧である必要はない。人間と同等か「ほんの少し有能」であればいい。その「ほんの少し有能」を目指して、研究者たちは日夜格闘している。

例えば、スーパーで私たちの多くはセルフレジの列を避ける。自分でやるより、店の人がレジに打ち込むのを待つほうが楽だからだ。だから今のところ、レジの仕事がなくなる恐れはなさそうだ。しかし小売業の経営に詳しいマサチューセッツ工科大学のゼイネップ・トンによれば、セルフレジはまだ発展途上。現状では「客に仕事を押し付けていると買い物客が反発しかねない」が、もっと進化すれば「小売業界の雇用に大きな衝撃を与えるのは確実」だと言う。

リアルな小売店はネット通販に駆逐されると、数年前から言われている。しかし、まだその事態は起きていないようだ。実際、1業者が撤退するごとに2つの業者が新たに参入している。

小売りは競争の激しい業界で、テクノロジーは消費者の買い物の方法だけでなく、ブランドとのつながりも変化させる。例えば、アマゾンが実店舗を出すと誰が想像しただろうか。またネット通販は小売市場の10%を占めるというが、残りの90%は実店舗が占めている。ただし実店舗の変化も激しく、アメリカの労働者に深刻な影響を与えている。

二極化が進む店舗の客層

デロイトコンサルティングで小売部門を率いるケーシー・ロバウーによれば「伝統的な小売業者が市場シェアを失っているのは、オンライン対リアルな小売店の戦いの結果だけではない」。むしろ「小規模で身軽なリアルの小売業者から戦いを挑まれている」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 5
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 9
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中