最新記事

航空機

MRJで納期7年遅れた三菱重工、ボンバルの小型機事業買収で巻き返しなるか

2019年6月27日(木)10時15分

三菱重工業は、カナダの航空機・鉄道車両大手ボンバルディアから小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収することで合意した。写真は18日、パリの航空ショー会場でスペースジェットを背に取材に応じる三菱航空機のアレックス・ベラミー最高開発責任者(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)

三菱重工業は25日、カナダの航空機・鉄道車両大手ボンバルディアから小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収することで合意した。ボンバルディアが持つ保守管理サービス網と世界的な顧客基盤を活用し、なかなか進まなかった小型ジェット市場における基盤確保に向けて取り組みを加速させる狙いだ。

MRJ(三菱リージョナルジェット)という名で始まった日本勢として50年ぶりに旅客機市場に復帰するという一大事業は、納期が当初計画から7年も遅れるなど壁にぶつかっている。ただボンバルディアが市場から撤退したことで、三菱に再びチャンスが巡ってきた。

先週のパリ国際航空ショーでは、三菱重工子会社の三菱航空機がMRJから名称を「スペースジェット」に変更するとともに設計を手直しした新たな機種(65─88席)をお披露目し、搭乗客が頭上の荷物入れにキャリーバッグを入れられるようになる天井の高い客室などをアピール。その際に同社最高開発責任者でボンバルディアの元幹部でもあるアレックス・ベラミー氏はロイターに「市場参入に際して最も手ごわい障壁の1つは、顧客との関係づくりとそれを維持するためのサポート態勢を築くことだ。(メーカーが)成功するか失敗するかは、製品サポートにかかっているとわれわれは承知している」と語った。

特に1日に最大で10回飛行するような最も消耗を強いられる小型ジェット機においては、こうしたサポート力の重要性が物を言う。

ボンバルディアは、コスト面の負担に耐えられずに市場からの撤退を余儀なくされた。スペースジェットよりはやや規模が大きいボンバルディアの110─130席の「Cシリーズ」は設計面で称賛を浴びたが、本格的に商用化したのは、それを1ドルで取得して「A220」に改称した欧州エアバスだった。

そしてボンバルディアは今回、CRJ事業を三菱に売り渡して小型旅客機市場から完全に手を引くことになる。

三菱も小型機開発は大幅な予算オーバーだが、ある業界筋は「日本勢はより長くゲームを続けることができた。三菱はボンバルディアよりも資金が潤沢だ」と説明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ノボノルディスク、不可欠でない職種で採用凍結 競争

ワールド

ウクライナ南部ガス施設に攻撃、冬に向けロシアがエネ

ワールド

習主席、チベット訪問 就任後2度目 記念行事出席へ

ワールド

パレスチナ国家承認、米国民の過半数が支持=ロイター
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    習近平「失脚説」は本当なのか?──「2つのテスト」で…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 4
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中