最新記事

企業

今こそ持続可能なグローバルビジネスを

2015年8月28日(金)19時22分
ニナド・パセック(CEEMEAビジネスグループ共同CEO、グローバル・サクセス・アドバイザーズ社長) ※Dialogue Review Jun/Aug 2015より転載

 開発済みの市場(先進国)と、開発途中の市場(新興国)を扱うセクションは分ける必要がある。企業の組織上、地域ごとのリーダーシップが確立されていることは重要な要素だ。

 経営のトップレベルであるボードメンバーには、新興市場の知識をもつ幹部を含めるべき。そして(行き過ぎはよくないが)地域に意思決定を分散させる。過度に中央集権的な企業は、新興市場で失敗しやすい。なぜなら、新興市場で現実に何が起きているのかをよく知らないまま、本部による意思決定がなされてしまいがちだからだ。

 新興市場はどこでも「打ち出の小槌」とは限らない。企業はそれぞれの地域や市場にどれほどのチャンスとポテンシャルがあるかを見きわめて資源配分をしていくべきだ。グローバルリーダーは、短期的な見返りを期待してはならない。投資さえすれば自動的に市場をリードできると思ったら大間違いだ。事業を立ち上げる段階で収益が思わしくなくても、企業のブランドを築き上げることに投資していると考えればよい。

 いま投資している新興市場でシェアを広げようとする場合に、それまでに同市場で稼いだ利益のみで追加投資を賄ってはいけない。拡大に必要な増加分は決して安くない。他の市場から資金をもってくることを考えた方がベターだ。私のクライアントの多くは、現地で社債を発行したり、さらには現地の証券取引所に上場したりしている。

新興国の企業を買収するチャンス

 とにかく企業が陥りやすい「短期主義」を避けることだ。「言うは易く行うは難し」なのだが、昨今では、いわゆる"投資家"たちに四半期ガイダンス(利益予想)を提供することを拒否する企業が増えてきている。CEOたちが、四半期で収益を見る習慣を止めていくならば、株価は下がるかもしれないが、長期的視点をもつ投資家たちを引きつけることになり、株式のオーナーシップが変わっていく。新興市場ビジネスのために企業ができる最善策は、国際ビジネスの何たるかを理解している投資家が多くの株を所有するように仕向けることなのだ。

 新興市場で成功するには、長期計画と投資が必要不可欠だ。私のクライアントには、10年、さらには20年の新興市場攻略プランを立てている企業もある。そして、言うまでもないことだが、長期の計画であっても、確実に実行していかなければならない。

 また、短期的な市場の混乱に過剰反応せずに、成長戦略を継続していくことが大事だ。新興市場には、不安定さや脆弱さがつきまとう。だが、それが長期プランの遂行を邪魔するようなことがあってはならない。万が一の事態に備えた計画を立てておくことも重要だ。将来、危ない局面に立たされても落ち着いて対処できるよう準備しておくのだ。ただし、そのときにも長期的視点に立った戦略を見失ってはならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、月内の対インド通商交渉をキャンセル=関係筋

ワールド

イスラエル軍、ガザ南部への住民移動を準備中 避難設

ビジネス

ジャクソンホールでのFRB議長講演が焦点=今週の米

ワールド

北部戦線の一部でロシア軍押し戻す=ウクライナ軍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 6
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 7
    「イラつく」「飛び降りたくなる」遅延する飛行機、…
  • 8
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 9
    40代は資格より自分のスキルを「リストラ」せよ――年…
  • 10
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 10
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中