最新記事

世界同時株安

ドナルド・トランプ「株安は中国のせいだ」

中国嫌いの共和党大統領最有力候補は、世界経済にとって悪夢か福音か

2015年8月25日(火)17時30分
マシュー・クーパー

自由貿易も敵 中国はアメリカから雇用を盗む国、と言うトランプ Brian Snyder-REUTERS

 世界の金融市場が混乱するなか、2016年米大統領選の共和党最有力候補であるドナルド・トランプは株価暴落を中国のせいにして、中国はアメリカにとって脅威だ、と言った。

「私はずっと、中国にアメリカの雇用が奪われていると言ってきた。われわれの金が奪われているのだ。気をつけないとやられてしまう。自覚が必要だ。誰もそれをわかっていない」。トランプは月曜の午後、インスタグラムの動画でそう発言した。

 その前には、ツイッターでは次のような発言もしていた。「市場は崩壊しつつある。すべては計画の不手際で、中国とアジアに主導権を握らせたせいだ。面倒なことになる可能性がある! トランプに投票を」

 もし市場の混乱が続けば、リーマンショック以降の株価高騰に終止符が打たれるかもしれない。2009年春に7000ドルを割り込んでいたダウ工業株30種平均は、1万8000ドルを超える水準まで上昇してきた。先週からの株価暴落は、過去6年にわたって世界経済の回復を後押ししてきた中国経済の成長に陰りが見えたという不安によるものだ。

 中国発の株価暴落は、選挙運動の中心に中国経済を据えてきたトランプにとって好都合だ。トランプは常々中国を、通商交渉を通じて抜け目なくアメリカから雇用を盗む経済大国として描いてきたが、今回の株価暴落のおかげで一歩踏み込んだ議論ができそうだ。アメリカはあまりにも密接に中国と結び付いており、中国経済の悪化がアメリカ経済の悪化に直結してしまう、というものだ。

 トランプは輸入品に高率の関税を課し、過去四半世紀にわたって行われてきた超党派の貿易自由化交渉を放棄するべきだと考えている。この政策の善し悪しはともかく、株価暴落でこの問題が選挙運動の中心に躍り出てくることは確かだ。

 トランプは、他の貿易・金融問題については多くを語っていないものの、先週末に出演したCBSのインタビュー番組『フェイス・ザ・ネーション』ではヘッジファンドを批判してこう述べた。「この国をつくってきたのはヘッジファンドの人々ではない。奴らは書類や金をあちこち動かして幸運を引き当てただけの連中だ。何の代償も支払っていない。馬鹿げている」

 投資家に対する増税を大っぴらに訴えることこそなかったが、この発言から察するに、トランプは投資に増税する案には抵抗がないようだ。トランプの税制案は今秋、提出されることになっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

再送-米ロ首脳、イスラエル・イラン情勢で電話会談 

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中