最新記事

ヨーロッパ経済

ギリシャを切る欧州の覚悟は本物か

国民投票の民意は「財政緊縮はノー」と「金融支援はイエス」だった。欧州には呑めない相談だ。

2015年7月6日(月)20時15分
ジョシュア・キーティング

これは勝利? 国民投票の勝利を祝う緊縮反対派 Yannis Behrakis-REUTERS

 欧州高官は「国民投票の『no』=ユーロ離脱」だと言う。ツィプラスは「そんのは脅しだ」と言う。いったいどちらが本当なのか──。

 5日の国民投票で、ギリシャ人の意思ははっきりした。事前の世論調査の結果をはるかに多くの人が、財政緊縮を伴うヨーロッパの金融支援を拒絶することを選んだのだ。

 勝ち誇ったアレクシス・ツィプラス首相は、今こそ強い立場で債権者との交渉に戻れると言った。

 国民投票は、潜在的な救済案についての賛否を問うものだったはずが、その救済案については数日前に決裂してしまい、既に何の救済案も存在していなかった。支援策に「no」と投票した多くの有権者はおそらく、特定の支援策よりも、外国の政府に厳しい政策を押しつけられる屈辱を終わらせたかったのだろう。

 ヨーロッパにとっては、先行きはもっと不透明だ。ドイツのアンゲラ・メルケル首相とフランスのフランソワ・オランド大統領、ドナルド・トゥスクEU大統領は、この危機について話し合うために明日の緊急首脳会議を招集した。だがジグマル・ガブリエル独副首相など少なくとも一部の欧州指導者は、このような環境下でギリシャとの再交渉など不可能だと言っている。

緊縮財政はいやだけれどユーロ圏内には残りたい

 まだ決まったわけではないが、ギリシャがユーロ圏から脱するとすれば、日曜以降になる可能性が高いだろう。

 国民投票が近づくにつれて、オランドとガブリエルを含むEUの高官が、もしギリシャが「no」の答えを出せば、それはユーロを離脱するのと同じ意味になると、恐ろしい警告を発していた。ティプラスは「脅しだ」と言い、「ヨーロッパに強制される緊縮財政はいやだけれどユーロ圏内には残りたい」と考えているギリシャ人を安心させた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米首都近郊で起きた1月の空中衝突事故、連邦政府が責

ワールド

南アCPI、11月は前年比+3.5%に鈍化 来年の

ワールド

トランプ氏、国民向け演説で実績強調 支持率低迷の中

ワールド

ドイツ予算委、500億ユーロ超の防衛契約承認 過去
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中