最新記事

ショッピング

アマゾンで買わないクリスマス

低賃金で従業員をこき使う「ブラック企業」ぶりに、ボイコット運動「アマゾン・アノニマス」が大盛況

2014年12月10日(水)13時12分
アメリア・スミス

倫理観が問われる スマホ事業の失敗など逆風の続くアマゾンのベゾスCEO Abhishek N. Chinnappa-Reuters

 イギリスを拠点に、反アマゾン運動を展開するウェブサイト「アマゾン・アノニマス(AA)」が、クリスマスシーズンに向けて盛り上がっている。AAの「アマゾンで買い物をしないクリスマス」キャンペーンで、同社がこれまでに被った損害は250万ポンド超。今もその額は、1日当たり5万ポンドのペースで増え続けている。

「アマゾンは従業員に対し、生活賃金を支払っていない。課税を逃れ、地元の店からは客を奪っている。今年こそ、われわれのお金をアマゾンから取り戻そう」と、AAは訴える。

 最低限暮らしていけるだけの「生活賃金」はロンドンを除くイギリス全体で時給7.85ポンド、ロンドンで9.15ポンドが指標となっている。国が定めている21歳以上の最低賃金は6.50ポンドだ。

 トイレ休憩の監視、3カ月で3回病欠したら解雇するという指針、EUの労働法規すれすれの週50時間労働──こうしたアマゾンの方針は「ぞっとする」と、AA運営者の1人、エミリー・ケンウェイは言う。

 AAには、アマゾンで働いたことのある人が自らの体験を匿名で語る「レビュー」欄もある。例えば、歩き通しの倉庫勤務を1週間続けて膝が腫れ上がった元従業員は、「二度とこの会社では働きたくない。大きな金属檻に入れられた奴隷みたいな気持ちだった」と書く。

 もう1人のAA運営者ベックスによれば、アマゾンは巨大なグローバル企業の暗部を象徴する存在だ。生活賃金以下の給与しか払わないだけでなく、昨年の法人税納付額は売り上げ43億ポンドに対し、たったの420万ポンド。これだけ安いのは06年にイギリス事業を、法人税率の低さで有名なルクセンブルクにある子会社に移管したからだ。

「アマゾンは、『世界で最も顧客中心主義の会社』を標榜している。われわれは顧客として、不売運動を通してその言葉を試したい」と、ベックスは言う。

 適切な社会貢献なしに儲けだけを追求することは許さない、という彼らの声は巨大企業に届くだろうか。

[2014年12月 9日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコがロシアからのガス輸送を保証 =ハンガリー首

ワールド

中国首相「関税の影響ますます明白に」、経済国際機関

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米FOMC控え様子見姿勢も

ビジネス

アングル:ワーナー買収合戦、トランプ一族の利益相反
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中