最新記事

投資

中国富裕層が群がるアメリカの高級物件

冷え込む国内市場を見限って海外の不動産に「お引っ越し」

2014年11月10日(月)12時30分
マット・スキヤベンザ

高級志向 5つ星ホテルの階上にある超高級コンドミニアム「ワン57」も人気物件だ(ニューヨーク) Mike Sega-Reuters

 中国政府は最近、不動産部門のテコ入れを図っているが、不動産市場は相変わらず苦戦している。中国の民間会社2社の調査によれば、国内主要288都市の8月の新築住宅価格は前月比で0・3%下げ、5カ月連続の下落となった。前年同月比では3%上昇したが、伸びは鈍化している。

 住宅価格が下がり続ければ、中国経済全体に重大な脅威となるだろうと専門家は懸念を示す。しかも国外で不動産を購入する中国人が増えている中、中国の不動産市場が崩壊すれば大量の資金が国外流出し、バンクーバーやニューヨークやシドニーのように遠く離れた市場でも住宅価格が上昇する恐れがある。

 中国は不動産部門に依存しており、GDPの伸びの16〜20%が不動産投資によるものだ。近年、輸出競争力が低下するなか、固定資産への投資によって高い経済成長率を維持してきた。

 どんな仕組みか説明しよう。国有銀行が地方政府への融資を拡大、地方政府はその資金を不動産開発業者に貸し、都市部に近代的な高層マンションが建設される。市民は国内の不安定な株式市場に投資する代わりに貯金をはたいて不動産を買い、富裕層は投機目的で複数のマンションを買いあさる......。

 この繰り返しが中国の開発業者を儲けさせ、建設ラッシュを招き、好況を維持してきた。その一方で住宅ブームはバブルの懸念をあおってもいる。不動産ブームの過熱を抑制しようと、中国の主要都市では過去1年間、住宅購入が制限され、2軒目の頭金の最低比率が引き上げられている。

海外の高級物件が人気

 しかし不動産市場が冷え込んだら、これからも住宅を買いたい中国人はどこに投資すればいいのか。

 投資先として魅力を増しているのは外国だ。中国政府は市民が国外に持ち出せる金額を1人5万ドルまでに厳しく制限しているが、他人と協力して規制をかいくぐることはできる。「銀行口座を交換するなどの方法で最大100万ドルを国外に持ち出せることも多い」と、中国経済に詳しいエコノミストのパトリック・チョバネクは言う。

 現に過去1年間、アメリカで住宅を購入する中国人が急増している。中国人による不動産購入は今年3月までに50%増加し、時価総額は現在220億ドルに達している。中国人富裕層を引き寄せようと、米政府はEB−5プログラム(アメリカ国内の地域開発事業に50万ドル以上投資した外国人に永住権を与える)の一環として、中国人6895人に移民ビザを発給。発給件数2位は韓国人だが、こちらは364人にとどまっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米人員削減、11月は前月比53%減 新規採用は低迷

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始 27

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中