最新記事

インド

モディの改革は世界経済を救うか

2014年7月25日(金)12時28分
ザカリー・カラベル(政治経済アナリスト)

外資規制の緩和に着手

 アメリカだけではない。世界中の企業にとって中国市場は重要な成長のエンジンとなった。中国にとっては、外資の導入によって国内の工業化が進んだ。中国経済の好調は、01〜02年と08〜09年の世界同時不況を限定的にとどめる役割も果たした。

 中国が経済発展のために最初に取った措置の1つは、外国の資本と競争に対する市場開放だ。さらに大規模な都市化計画に着手し、現代的なインフラを整備し、農村から都市への出稼ぎを奨励した。その取り組みはまだ終わっていない。

 インドは今、同様の政策を取ろうとしている。もちろん中国は中央集権的な政府があらゆる面で強力な指導権を握っており、インドは混乱しがちな民主主義ゆえの長所と短所を持つという違いはある。

 その一方で、一般的な認識とは異なり、中国政府は地方政府の管理に苦労してきた。インドの中央政府も強力ではあるが過去20年以上にわたる連立政権によって一貫性のない政策を取ってきた。

 現在のインドには、消費に積極的な都市中流層が00年当時の中国よりも多く存在する。モディ政権は今回の予算案に大規模なインフラ整備計画を盛り込んだが、中流層を対象とする減税策にも取り組む見込みだ。

 モディはグジャラート州の首相時代に、外国企業を積極的に誘致して地元経済を活性化させた実績がある。そしてこのモデルをインド全体に導入したい考えを、選挙戦のときから明らかにしていた。

 しかしインドには外国からの投資を制限する規制がある。近年各分野ごとに規制を緩和する動きがあるものの、その複雑なルールは依然として外国企業の直接進出を妨げている。外資規制はインド国内の腐敗を助長する側面もあった。

 今回の予算案で、モディ政権は防衛と保険の2分野で外資規制を緩和することを明言。出資上限を従来の26%から49%に引き上げるとしている。防衛産業はインドの市場開放をアピールする分野として最適とはいえないが、少なくとも他の分野を開放する先駆けになるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易摩擦再燃で新たな下振れリスク、利下げ急務に

ワールド

トランプ氏、習氏と会談の用意 米財務長官 中国「混

ビジネス

シカゴ連銀発表の米小売売上高、9月は+0.5% 前

ビジネス

米BofAの7─9月期は増益、投資銀行業務好調で予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 2
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 3
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に共通する特徴、絶対にしない「15の法則」とは?
  • 4
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 5
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 6
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 7
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 10
    【クイズ】サッカー男子日本代表...FIFAランキングの…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中