最新記事

SNS

フェイスブックの身勝手な「心理実験」

無断でユーザーの心理実験をしたことについて「よくある製品テスト」と言ってのける神経は大丈夫か

2014年7月15日(火)15時07分
ウィル・オリマス

罪の意識なし 謝罪にならない謝罪をするサンドバーグCOO Adnan Abidi-Reuters

 明るい投稿を増やすとユーザーの投稿も明るく、暗い投稿を増やすと暗くなる──フェイスブックが米コーネル大学らと12年にユーザーに無断で行っていた心理実験が最近になって報じられ、物議を醸している。COO(最高執行責任者)のシェリル・サンドバーグは先週、ユーザーに対して謝罪した。

「実験」では、フェイスブック上のニュースフィードに表示される友人の投稿を勝手に削除するなどの操作がなされていた。暗い内容の投稿を減らせば本人の投稿は明るい話題になるかなどの心理状況を調べるためだ。

「この調査は企業がよく行う製品テストの一部であり、それ以上でもそれ以下でもない。問題は説明が不十分だったことだ。その点については謝罪する。ユーザーを動揺させるつもりはなかった」と、サンドバーグは語った。

 これは実験に対する謝罪ではない。調査の何が「説明不十分」だったというのか。調査の前提や方法、結果については、学術誌に詳細に発表されている。

 そして「ユーザーを動揺させるつもりはなかった」とは、どういう意味か。この実験の目的はまさに、フェイスブックが一部のユーザーを動揺させることではなかったか。

 人間を対象とした学術研究の基準で考えれば、この実験を非倫理的とみる人がいてもおかしくはない。企業の技術開発の基準で考えれば問題ないという見方もできる。どちらにしろ、意図的でなかったものなど何一つない。

 サンドバーグの謝罪の言葉には誠実さが感じられず、筋も通らない。そこから彼女の意図をくみ取るには、行間を読まなければならない。
サンドバーグの本音は、フェイスブックはそもそもこの調査の結果を発表しなければよかった、ということではないか。

 サンドバーグの声明のもう1つの解釈は、本当は申し訳ないとはまったく思っていないということだ。多くの人が憤慨しているので、何かを言わなくちゃ、と思っただけかもしれない。

© 2014, Slate

[2014年7月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン攻撃を警告・ハマスに武装解除要求

ビジネス

米国株式市場=下落、ハイテク株に売り エヌビディア

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで上昇、介入警戒続く 日銀

ワールド

トランプ氏「怒り」、ウ軍がプーチン氏公邸攻撃試みと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中