最新記事

法人税

恥知らずで反競争的な企業節税

莫大な利益を上げている企業にこんな節税を許したら、誰も税金を払わなくなる

2014年3月12日(水)15時20分
アンジェロ・ヤング

補助金も同然 節税「幇助」は許さないと言うEUの競争政策担当者アルムニア Francois Lenoir-Reuters

 EU当局は1年ほど前から、大企業が節税のために域内の低税率国に利益を移す動きを阻止しようとしてきた。そして先週、欧州委員会のアルムニア副委員長(競争政策担当)がこうした節税を企業誘致の売りものにしている国は、企業に反競争的な補助金を出しているのも同然と見なすこともあると語った。

「国家間の税法の違いを利用して、多国籍企業の多くが合法的に納税額を低く抑えている。課税の公平という理念に反する行為だ。大企業が相応の税金を払わないなら、どうして一般市民に負担を求められるだろう」と、アルムニアは語った。

「もしどこかの国の法律や税務当局がこうした慣行を後押ししているなら、それは『国家による補助金』に当たるかもしれない。必ずこの問題を是正する」

 アルムニアは名指しを避けたが、悪名高いのはアイルランドとオランダだ。低税率の両国を行ったり来たりする節税手法から「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」の呼び名も付いたほど。

 アップルやスターバックスなどの有名企業もアイルランドとオランダを使った節税で批判を浴びている。

 アップルはアイルランドにグローバル本社を置き、その利益368億ドルに対してたった7億1300万ドルしか納税しなかった。税率は1.9%だ(アメリカの法人税率は35.3%)。

 スターバックスのイギリスの子会社も98年の設立以降、わずかな税金しか納めていない。2年前にそれが問題化すると、スターバックスはイギリスで利益が出た年は1回しかなかったと説明する一方、イギリスの子会社には(利益を減らす目的で)オランダにある親会社にスターバックスのブランド使用料を支払わせたり、スイス子会社から2割増し価格でコーヒー豆を仕入れさせていたことなどを認めた。オランダの税務当局と税率引き下げの交渉もしたという。

 ここに挙げた企業は氷山の一角。補助金を放置すれば、アルムニアの言うとおり税金を払う市民などいなくなるだろう。

[2014年2月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中