最新記事

疑惑

スノーデンをかくまうウィキリークスの資金源

スノーデン支援で寄付は増えているが資金の出入りは「情報公開」に程遠い

2013年7月24日(水)15時25分
ケイトリン・ディクソン、イライザ・シャピロ

2人の逃亡者 アサンジ(左)やスノーデンを守るためには莫大な費用が必要かかる  REUTERS (SNOWDEN), FINBARR O'REILLY-REUTERS (ASSANGE), JOHN LUND-BLEND IMAGES/GETTY IMAGES (DOLLAR BILLS)

 国際的な逃亡犯罪人を2人もかくまうには金が掛かる。内部告発サイト「ウィキリークス」にとって幸いだったのは、米政府のネット監視システムを暴露し、亡命先を探している元CIA職員のエドワード・スノーデンに「集金力」があったことだ。スノーデンの支援を開始して以来、同サイトには続々と寄付が集まり始めた。

 ウィキリークスは、創設者ジュリアン・アサンジとスノーデンの裁判関連費用と生活費に多額の資金を必要としている。昨年には9万ドル近くの金を集め、スノーデン支援を開始してからは毎日約1300ドルの寄付が届いているが、もっと金が必要だという。

 ウィキリークスの昨年の予算は51万197ドル。3人の有給のソフトウエア開発者で運営しているウェブサイトにしては、かなりの金額だ。それでも常に赤字のようだ。

 皮肉なことに、ウィキリークスは情報公開を使命に活動しているにもかかわらず、自分たちの活動資金の出入りは意図的に見えにくくしている。寄付をした支持者が金の使い道を知ることは不可能に近い。

 ウィキリークスが内部告発文書をインターネット上で公開するだけにとどまらず、国際的な内部告発者保護組織という役割を担い始めるにつれて、必要な資金は膨らんできた。現在は、アサンジとスノーデンだけでなく、ウィキリークスに秘密文書を流したブラッドレー・マニング元米陸軍上等兵のための資金も集めている。

支出は寄付金の5.5倍

 しかしウィキリークスはビザ、ペイパル、ウェスタン・ユニオン、バンク・オブ・アメリカに寄付金支払いの決済を拒否されている(7月3日まではマスターカードも)。そのため、さまざまなルートを工夫して寄付金を集めなくてはならない。

 インターネット経由の寄付金集めで最も大きな役割を担っているのは、ベルリンに拠点を置くワウ・ホランド財団。01年にドイツのハッカー組織のメンバーによって設立された団体だ。

「スノーデン事件を機に、ウィキリークスへの関心が高まっている」と、同財団の創設メンバーの1人、ベルント・フィックスは言う。「報道で取り上げられるたびに、寄付金が増えている。今は1日にざっと1000ユーロくらい。事件前に比べればかなりの金額だが、2010年はもっと多かった」

 ウィキリークスへの資金供給源の中には、特定の目的や活動に用途を限定して寄付を募っているものもある。「ブラッドレー・マニング防衛基金」はその1つだ。同基金は10年6月以降で、128万9972ドルを集めている。

 ウィキリークスに寄付をするのは、支持者にとってもひと苦労だ。自分の寄付した金がどのように使われているのか知りたいと思うのが当然だろう。では、同サイトはどのように金を使っているのか。

 昨年のウィキリークスの支出は、同じ年に寄付を通じて受け取った金額を大幅に上回っている。支出額は寄付総額の約5.5倍にも達した。

 予算の使い道は、大きく分けて3つある。サーバーの設置・運営費用、広報と新たな機密情報暴露のための準備の費用、そして──裁判などの法律関連費用だ。

 ただしアサンジには弁護士や法律専門家の国際的人脈があり、彼らの多くはボランティアでウィキリークスを支援している。アメリカでアサンジの弁護を担当するマイケル・ラトナーも報酬は受け取っていないという。

 やはりどこまでも不透明だ。

[2013年7月23日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中