最新記事

自動車

高級EVテスラの快進撃に米ディーラーの悲鳴

ノースカロライナ州で可決された全米初の「直接販売禁止」法案にみる本音と建前

2013年5月14日(火)18時39分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

出る杭? 快進撃を続けるテスラモーターズのEV「モデルS」 Noah Berger-Reuters

 ディーラーを介さずに自動車を直接販売することは許さない――先週、ノースカロライナ州でそんな法案が可決され、物議を醸している。

 同州の上院商業委員会が満場一致で可決したこの法案は、すべての自動車メーカーを対象としているが、真の標的はサンフランシスコの高級電気自動車(EV)メーカーのテスラモーターズ。同社は米自動車業界で唯一、ディーラーを介さない直接販売を基本とする自動車メーカーだ。

 今回の法案は、同州の自動車ディーラー協会の後押しを受けたもの。彼らを支持する州上院議員のトム・アポダカ(共和党)いわく、法案の目的はメーカーとディーラーの不公平な競争を防ぐことだという。しかし、何が「不公平」かは明確ではない。現に、アップルがネット上あるいはアップルストアで自社製品を消費者に直接販売することは問題になっていない。

 とはいえ、ディーラーがテスラを脅威に感じるのも無理はない。昨年6月に同社が発売した「モデルS」は、今年の第一四半期にメルセデス・ベンツのSクラスやBMWの7シリーズなどを上回る売り上げを記録。テスラの人気が今後さらに高まり、そのビジネスモデルが浸透すれば、消費者もディーラーはいらないと考えるようになるかもしれない。

 テスラのディアミッド・オコーネル副社長(事業開発担当)は、今回の法案が州議会で修正されることを期待していると語った。テスラは既に同州でモデルSを80台販売しており(大半がネット経由)、さらに60台近い販売手続きが進んでいるという。来年には、同州で初めてのモデルルームも設置する予定だ。

 ディーラーを介した販売手法は大手メーカーには有益かもしれないが、新興企業には合わないと、オコーネルは語る。とりわけテスラの商品のように、従来の自動車産業に対する挑戦を象徴するような会社の場合はなおさらだ。「今にこだわっていて、未来を売ることができるか?」と、オコーネルは言う。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中