最新記事

消費

iPhone5よりいい「買い物」探し術

革命的ではない新製品を買うより、もっと有益で社会にも役立つお金の使い道がある

2012年11月5日(月)15時15分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

大きな幻想 iPhone5を手に入れてもコミュニケーションの方法が一変するわけではない Lucas Jackson-Reuters

 私はアップルの「iPhone5」に興味がない。新しい機能も、地図アプリの不具合も、納品スケジュールもどうだっていい。

 カスタマイズした自分のiPhoneをインスタグラムで公開するのも、どうかと思う。愛する子供やペットじゃあるまいし。たかがプラスチックと金属でできた携帯電話ではないか。

 もちろんiPhoneは大ヒット商品ではある。向こう数カ月で1000万台も売れる見込みで、平均価格299ドルとして総売上額約30億ドルになる。確かに景気拡大に貢献しそうだ。

 とはいえ、社会に大きな変化をもたらすことはないだろう。iPhone5を使ったからといって仕事やコミュニケーションの方法が一変するわけではない。

起業家の「プチ」エンジェルに

 iPhone5を買うくらいなら、そのお金をもっと有効に使えるのではなかろうか。例えば、住宅の値下がりで困っている人に100台分の代金を提供したら、より低利の住宅ローンへの借り換えが可能になる。

 ネット上で小口投資を募るウェブサイト「キックスターター」には、取りあえずの資金調達額の目標が数千ドルという事業がたくさん紹介されている。地域社会の開発に特化した金融機関に預金するのも一案だ。

 国際派なら、途上国の起業家に少額融資を行う組織「キバ」を利用してもいい。iPhone1台分のお金を提供すれば、リベリアの行商人がヤシ油やコショウの仕入れをする手助けができる。うまくいけば、利子付きで払い戻しを受けることも可能だ。

 手作り品の売買サイト「エッツィー」なら、温かみのある素朴な作品が買える。農産物直売所で買い物をするのもいい。

 都市在住の高所得者の資金を集めて、市民の生産性と生活の質を向上させる企画を求められたら、私はニューヨークのメトロノース鉄道の車両内への高速インターネット導入を提案したい。公共の建物の省エネ化に投資するのも賢明だろう。

機能はiPhone4で十分

 iPhoneをめぐる騒ぎは、保証期間が過ぎる前に陳腐化するように作られた商品の「消費狂騒曲」の繰り返しにしか見えない。

 ただし、私はアップル製品が嫌いなわけではない。わが家には同社のデスクトップとマックブック・エアがある。iPad2台、iPhone3台、iPod4台、おまけに90年秋購入のマッキントッシュまである。

 でもiPhone4を使い始める前と後で、自分の内面や能力が大きく変わったということはなかった。それに私にとって、スマホはiPhone4で十分。先を争うようにしてiPhone5を買いたがる人の気が知れない。

[2012年10月10日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

10月スーパー販売額2.7%増、節約志向強まる=チ

ビジネス

中国、消費促進へ新計画 ペット・アニメなど重点分野

ワールド

米の州司法長官、AI州法の阻止に反対 連邦議会へ書

ビジネス

7-9月期GDPギャップ3期ぶりマイナス、需要不足
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中