最新記事

子育て

お願いだから産休をとって、マリッサ!

出産後すぐに職場復帰するというヤフーCEO、マリッサ・メイヤーの選択は、働く母親にとって大迷惑

2012年10月3日(水)16時20分
アリソン・ベネディクト

仕事の鬼? 今どきワークとライフを「アンバランス」にしようとしているメイヤー Stephen Lam-Reuters

 グーグルのやり手の副社長からヤフーのCEOに転じたばかりのマリッサ・メイヤーが、予定どおり男児を出産した。夫のツイートによれば、「母親も赤ん坊も元気そのもの」。

 メイヤーはかねてから、自然分娩でも帝王切開でも、出産後長期にわたって会社を休むつもりはないとしていた。7月にはフォーチュン誌に「産休は数週間程度で、その間も(家から)仕事は続ける」と語った。出産直後の報道によれば、今もその気持ちは変わっていないようだ。

 フォーチュン誌の記事が出たとき、メイヤーの短すぎる産休は働く母親のハードルを高くするのではないかと、懸念する声が多くあった。全米の心ない上司たちは、メイヤーを見習えと圧力をかけてくるだろう。「あのマリッサ・メイヤーは初産から数時間後には病院のベッドから会社に電話してきて朝一番の会議に参加したらしい。それを考えれば、無名の中間管理職である君だって、出産後でもメールを返すことぐらいできるだろう」

 そこまでひどくなくても、働く女性は自らに高い目標を課す傾向がある。メイヤーが仕事と家庭の「アンバランス」を選んだせいで、世の働く女性たちも出産後に心と体がまだ準備できていないうちから早く仕事に戻らなければと焦りだすかもしれない。

経済的に恵まれているからこそ

 もっとも、メイヤーの決断が職場にもたらす影響よりも、家庭にもたらす影響のほうがずっと心配だ。なぜならそこには、生まれたばかりの赤ちゃんがいるからだ。

 メイヤーは足の治療を受けたわけではない。ひとつの小さな命、1人では生きていけない小さな赤ん坊をこの世に送り出したのだ。しばらくはフルタイムで世話をする責任が彼女にはある。

 確かに世の中には、経済的な理由から長い産休を取る余裕がない女性も多い。そんな場合でも赤ん坊がちゃんと育つのは事実だ。だが、それを理想的な姿だと言う人はいないだろう。経済的に恵まれたメイヤーのような母親こそ、できるだけ赤ん坊と過ごすべきだ。

 注意してほしい。メイヤーはもう、ただのセレブCEOではない。全米が注目する母親でもある。そして彼女の一挙手一投足は、ヤフーはもちろん他の会社でも、働く女性たちの基準になってしまうのだから。

© 2012, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、12月利下げ巡り温度差 NY連銀総裁は含み

ビジネス

8月米卸売在庫横ばい、自動車などの耐久財が増加

ビジネス

10月米CPI発表取りやめ、11月分は12月18日

ビジネス

ミランFRB理事、12月に0.25%利下げ支持 ぎ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 3
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中