最新記事

ネット

FB化するグーグル新サービスに要注意!

個人情報をさらして非難ごうごうの新検索サービスの狙いは8億人の「友達データ」を取り込むこと

2012年2月16日(木)15時21分
ダニエル・ライオンズ(テクノロジー担当)

宗旨替え 「邪悪になるな」の理念を捨ててグーグルは強硬手段に打って出た Reuters

 グーグルが先週始めた新検索サービス「サーチ・プラス・ユア・ワールド」は、実に厚かましいものだ。半年前に開始したSNS「グーグル+(プラス)」とグーグル検索を連携させ、検索結果にウェブ上の情報だけでなく、グーグル+で共有されている個人情報も表示する。

 グーグルによれば新サービスの意義は、個人向けにより行き届いたサービスができること。だが批判派に言わせれば、グーグルは単に市場での独占的地位を利用して、次の市場を奪おうとしているだけだ。

 かつてマイクロソフトは、圧倒的シェアを誇るOSのウィンドウズに自社のブラウザ、インターネット・エクスプローラを組み込んで販売した。おかげで当時人気だったブラウザのネットスケープは片隅に追いやられた。独禁法違反訴訟は延々と長引き、企業イメージも悪化した。

 グーグルも同じ立場かもしれない。米検索市場で約3分の2のシェアを占める圧倒的優位性を使って利用者4000万人のグーグル+にもっと人を呼び込み、8億人の利用者を擁する世界最大のSNSフェースブックに挑む──そんな魂胆が透けて見える。

 先週サーチ・プラス・ユア・ワールドが始まると、ブロガーや専門家、プライバシー保護団体などから一斉に非難の声が上がった。奇妙なのは、攻められる側のフェースブックが沈黙を守っていることだ。この沈黙こそ、グーグルの新サービスの狙いを雄弁に物語っている。

 私の考えはこうだ。フェースブックは金鉱の上に座っている。それは利用者8億人のデータという宝の山。今は地下深くに眠っているが、掘り出して加工すれば高値で売れる。

 フェースブックはまだその価値を発掘し始めたばかりだ。2011年の売り上げは推定40億ドルだが、それもほんの始まりにすぎない。数十億〜数百億ドルの利益が眠っている可能性もある。

ネットの「私有地」はつぶす

 しかもこの宝の山は、金鉱のように掘り尽くすということがない。フェースブックが所有権を主張する土地、即ち個人データの山からの売り上げは、利用者が増えればそれだけ成長する。フェースブックの足元に埋まっているデータは、歴史上収集されたあらゆるデータの中で最大かつ最も価値あるものだ。

 グーグルは、フェースブックのこの土地からの分け前を欲しがっている。有名な創業理念「邪悪になるな」は脇へ置き、こう考えたに違いない。あそこに大金がうなっている。企業にとっては何といっても利益がすべて、グーグルにとってもだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドネシア中銀、ルピア圧力緩和へ金利据え置き 2

ビジネス

MS&AD、純利益予想を上方修正 損保子会社の引受

ワールド

アングル:日中対立激化、新たな円安の火種に 利上げ

ビジネス

農林中金の4ー9月期予想上振れ 通期据え置きも「特
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中