最新記事

米中関係

アメリカにもレアアース輸出規制の強硬中国

中国の環境技術補助金に米業界が異議を唱えると、中国はレアアースの輸出停止で対抗。報復合戦の始まりか

2010年10月20日(水)15時16分
スティーブ・レバイン

切り札 世界の生産量の95%を占めるレアアースの輸出規制で今度はアメリカを揺さぶる中国 Bobby Yip-Reuters

 米通商当局は10月15日、中国が自国の環境技術部門に多額の補助金を不当に支給しているというUSW(全米鉄鋼労組)の訴えに応じて中国に対する調査を行うと発表した。クリーンエネルギー関連事業は、中国を含む多くの国々で戦略的な優先順位の高い重要な産業だと位置づけられており、中国が自国産業を優遇することによって、アメリカの産業に悪影響を及ぼす恐れがある。

 アメリカのこの決定に対して19日、中国はある明確な答えを示した。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、中国政府がアメリカに対するレアアースの輸出を制限し始めたというのだ。

 レアアース(希土類)と総称されるこの17種類の元素は、最新電池や薄型テレビなどのハイテク製品や、ミサイルやジェット機などの軍備品を製造する上で欠かせないもの。世界の生産量のうち約95%を中国が占めている。

 このニュースが飛び込んできたのは、中国が来年、各国へのレアアースの輸出枠を今よりさらに削減すると発表したのと同じ日だった。中国は7月、今年の輸出枠を前年比で40%削減すると決定したばかり。来年はさらにここから30%削減される見込みだと、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 レアアースの供給は、多くの企業や国々にとっての死活問題。日本は尖閣諸島沖で中国漁船の船長を逮捕した問題で、9月21日から輸出規制を受けている。今回のことでレアアースの中国依存に懲りた数社はその後、オーストラリアやアメリカ、モンゴル、カザフスタンなどに眠るレアアースの採掘や生産を再開させる動きを活発化させている。だが、こうした計画が実を結ぶのは何年も先のことだ。

 もし中国の対米輸出停止が本当なら、米中間で最近じわじわと増えつつあった経済上・貿易上の「報復合戦」をエスカレートさせる可能性がある。11月の米中間選挙を前に、ただでさえアメリカ全体がピリピリした雰囲気に包まれていることを考えると、オバマ政権としても対抗措置をとらざるを得ないのではないか。

Reprinted with permission from "The Oil and the Glory", 20/10/2010. © 2010 by The Washington Post Company.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、60日間の一時停戦案を承認 人質・囚人交換

ワールド

米ウクライナ首脳会談開始、安全保証巡り協議へとトラ

ワールド

ロシア、ウクライナへのNATO軍派遣を拒否=外務省

ビジネス

トランプ政権、インテル株10%取得巡り協議中と報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する現実とMetaのルカンらが示す6つの原則【note限定公開記事】
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 6
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 7
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 10
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中