最新記事

貿易

米中「貿易戦争」を覚悟せよ

2010年9月28日(火)18時18分
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト)

アメリカの報復は保護主義とは違う

 米議会の動きが圧力となって、中国が大幅な人民元切り上げに踏み切れば理想的だが、より現実的なシナリオは、スムート・ホーリー法の再現だろう。不安定な世界経済にとっては最悪のタイミングで2つの超大国が対立することになるが。

 各国で経済ナショナリズムが台頭すればコントロールするのは難しいかもしれないが、当時と今とでは大きな違いがある。スムート・ホーリー法は、アメリカの露骨な保護主義の表れだった。多くの製品の関税が引き上げられ、多くの国が報復措置に出た。一方、今回のアメリカの行動は中国の保護主義を阻止するためのものだ。

 第2次大戦後の通商体制は相互利益の原則に基づいており、完璧でないとはいえ、その原則は守られてきた。だが中国は、自国のニーズに合わせた通商体制を望んでいる。共産党の権力維持に必要な雇用を支える巨大な輸出市場、石油や食材、その他の重要な原材料の供給源の独占、テクノロジーでの優位性というニーズだ。諸外国の経済の成否は、中国の国益への貢献度によって決まる。

 いま対立しているのは、世界秩序に関する2つの考え方だ。旧来の秩序を作り上げ、守ってきたアメリカは、おぞましい選択に直面している。中国の野望に抵抗して、誰もが敗者となる貿易戦争を始めるリスクをとるか、あるいは何も手を打たず、中国に新たな通商体制を構築させるのか。

 前者は危険を伴う。だが、後者は世界を破滅させるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イーライリリー、次世代細胞療法バイオベンチャーを2

ワールド

エプスタイン氏共犯者、トランプ氏に恩赦要請 議会証

ビジネス

物価高で節約志向強まる、家計の軽減策訴え 内閣府の

ビジネス

ウェイモ、テネシー州で完全自動運転を実現
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業績が良くても人気が伸びないエンタメ株の事情とは
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 9
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 10
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中