最新記事

新興国

「五輪」主催でバレたインドの後進ぶり

2010年9月8日(水)18時12分
スディブ・マズムダル(ニューデリー支局)

 元スポーツ相で最大与党、国民会議派の国会議員のマニ・シャンクル・アイヤルは、インドが今後、大きなスポーツイベントのホスト国になることがないよう、英連邦競技大会が失敗に終わってほしいという。「大会に費やされたカネがあれば、地方のインフラを整備したり、インドをスポーツ大国にするために多様な種目のスポーツ選手に強化費を出したりできたはずだ」

この主張に同調したインド・サッカー界の星、バイチュン・ブティアも「大会を誘致すべきではなかった」と話した。

 こうした否定的な反応を受けて、マンモハン・シン首相は先月、大会の責任者らを呼びつけ、少なくとも4人の高官を汚職を理由に解任。ほかの関係者も警告を与えた。さらにシンは、織委員会委員長のスレシュ・カルマディに大臣たちへの説明責任を課した。シンと国民会議派のソニア・ガンジー総裁は大会終了後に汚職を厳しく取り締まると約束しているが、まだ誰一人として告発されていない。

 先週、シンは開会式と閉会式が行われるスタジアムに自ら足を運び、工事を急ぐよう関係者にはっぱをかけた。だが、何をしてもインド国民は自信を取り戻せない。実際、最大野党のインド人民党(BJP)からは、国民を活気づけることができないシンを馬鹿にする発言も聞こえている。「首相が自ら床掃除をしようとしているのに、スタジアムはまだ完成していない」と、BJPの有力者ナレンドラ・モディは言う。

 インドの名声を高めるチャンスを逃した非効率で無神経な指導層に、多くの国民が怒りを募らせている。国民はもはや栄光を求めていない。ただ、救いようのない大失敗だけは何とか回避したいというのが、彼らの唯一の願いだ。 
 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務長官、FRBに利下げ求める

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中