最新記事

アメリカ経済

新車販売「2割減」が朗報な理由

8月の新車販売台数の大不振は「二番底」の予兆ではない。自動車業界は前よりスリムで健康になっている

2010年9月6日(月)18時22分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

快調 フォードの人気車種エクスプローラーの2011年モデル(7月26日ミシガン州ディアボーンの同社本社前で) Rebecca Cook-Reuters

 最近のニュースを読む限り、アメリカの自動車産業の置かれた状況は、かなり暗く見えるだろう。「8月の新車販売台数が大幅減」と、ウォールストリート・ジャーナル紙は書いた。「8月の新車販売台数としては、83年以来最低の数字」と指摘したのは、ロイターだ。

 景気が「二番底」に落ち込むのではないかという懸念がしきりに指摘されているなかで、その不安を裏付けるかのようなデータが発表されれば、悲観論が高まるのも不思議でない。しかし、8月の新車販売台数のデータは、景気が二番底に落ち込みつつある証拠とは言い切れない。むしろ、実際はその逆だ。

 モーター・インテリジェンス誌によれば、8月のアメリカの新車販売台数は99万7468台。7月に比べて約5%減、09年8月に比べて21%減だ。

「大幅下落」であることは間違いないが、10年8月と09年8月を単純に比較するのはおかしい。大リーグで筋肉増強剤の使用が横行し、「飛びやすいボール」が用いられていた時代と比較して、最近のホームラン数が少ないと言うようなものだ。09年8月の新車販売は、低燃費車への買い替えに補助金を支給するオバマ政権の政策(現在は終了)の恩恵を強く受けていた。

経済危機以前への郷愁は捨てよ

 もっと長い目で数字の推移を見てみよう。モーター・インテリジェンスの統計によると、アメリカの年間の新車販売台数は、07年が1614万台、08年が1324万台、09年が1043万台と急減した。月次の数字を見ると、新車販売台数は08年春以降、09年11月まで減り続けている。もっとも、その後はこの8月までずっと、前年同月比でプラスを記録し続けた。その結果、2010年1〜8月のアメリカの新車販売台数は前年同期に比べて、18%増えている。

 アメリカのGDP(国内総生産)成長率が減速するなかで、自動車の販売台数は伸びたのだ。2010年8月の新車販売台数は、1月の数字と比べると43%増えている。

 現在のペースでいけば、2010年のアメリカの新車販売台数はおよそ1150万台となる見通し。09年より回復しているが、07年の数字には遠く及ばない。新車販売台数や住宅価格が07年の水準に戻っていないと嘆く人は多い。だが、あの超低金利時代は明らかに異常だった。当時に回帰することは決して望ましくない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベネズエラ野党指導者マチャド氏、ノーベル平和賞授賞

ワールド

チェコ、新首相にバビシュ氏 反EUのポピュリスト

ビジネス

米ファンドのエリオット、豊田織株5.01%保有 「

ワールド

タイ・カンボジア紛争、トランプ氏が停戦復活へ電話す
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中