最新記事

米経済

メガ雇用回復がやって来る!

2010年1月13日(水)14時54分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

 政治もこうした傾向を増幅している。右派にとっては、バラク・オバマ「社会主義」政権下での景気回復は自分たちの信条に反し、あってはならないことだ。2月に成立した景気対策法にも、共和党議員はこぞって反対票を投じた。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の経済顧問を務めたスタンフォード大学教授マイケル・ボスキンは3月、「オバマの急進主義がダウを殺している」と書いた。しかしその後、ダウ工業株30種平均は57%上昇した。

 一方、左派が経済を悲観する理由は2つある。1つは、銀行救済策への負い目。経済を破壊しかけた高給の愚か者たちに不当な報酬を与えることに罪の意識がある。

次に控える成長産業とは

 もう1つは、金融危機で信用が失墜したウォール街と共和党にオバマが迎合し過ぎること。景気対策法が上院を通過するのに必要な共和党票3票を獲得するため、政府は景気対策の規模を約3000億ドル削減した。おかげで効果のない政策になってしまったと、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマンは主張する。

 悲観主義の背景には、もっと抽象的な要因もある。集団的な想像力の欠如だ。確かにマクロ経済の数字は雇用回復の兆候を示しているようだが、その雇用がどこから湧いてくるのか分からない。近年の雇用創出を引っ張ってきた住宅ブームや借りやすいローンはもはやない。インターネットや住宅関連産業のような、次の巨大産業も見当たらない。

 次の雇用の牽引役は1つの大きな産業ではなく、比較的小さい複数のスポンサーによるものになりそうだ。政府支出もその1つ。例えば国勢調査局は、10年の国勢調査に備えて120万人を雇用しようとしている。

 景気対策法で用意された7870億ドルも、実際に使ったのはまだ3割の2376億ドルだけ。残りは10年と11年の減税やインフラ支出に使われる。雇用回復もそれで底堅いものになるだろう。

 12月9日、ニュージャージー交通局は、ハドソン川の下を通ってニューヨークとニュージャージーを結ぶ通勤列車用のトンネル工事を2つの建設会社に発注した。事業規模は5億8300万ドルで、来年には少なくとも1000人の雇用を生み出すだろう。

ドル安が輸出の追い風に

 世界経済の成長と弱いドルは、輸出の追い風になる。アメリカの輸出は08年7月の1640億ドルから09年4月の1220億ドルに落ち込んだが、その後は毎月増加して10月には1370億ドルまで回復した。ボーイングは12月4日、大韓航空から次世代旅客機747‐8型機5機を計15億ドルで受注したと発表した。

 政府からの新たな支援もある。12月9日、オバマは景気刺激策の第2弾となる雇用対策を発表した。中小企業が新規雇用をした場合の税優遇や、既に成功を収めている新車買い替え助成制度などが含まれる。

 もっともこの雇用対策も、超党派の批判の的になっている。少な過ぎると左派は言い、右派はやり方が間違っていると言う。オバマの政策は「財政支出頼りでケインズ的過ぎる」と、下院共和党院内幹事エリック・カンターは先週、本誌に語った。

 雇用をめぐる悲観論がこれほど根強いのも驚くに当たらない。金融危機以降の経験から、人々は政府もアメリカ企業も信じられなくなっている。

 だが終末論者は間違っている。彼らはため込んだカネを企業が使うわけがないとか、新たな雇用を生み出す飛躍的な技術など出てくるわけがないと思い込んでいる。だが、5年前に2300人ほどだったグーグルの社員は今では2万人になっている。04年の時点で、それを予想できた人がいるだろうか。経済学者は5カ月先のことさえ予測できない。

 最近の経験を思えば、アメリカ人が雇用の先行きに希望を持てないのも自然の成り行きだ。だが今は、そうした常識のほうが大きな間違いの可能性がある。間違いであるほうに、実に多くの人々の雇用が懸かっている。私自身の雇用も含めて。

[2009年12月23日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、月間では主要通貨に対し2%

ワールド

トランプ氏、議会承認済みの対外援助予算を撤回へ 4

ワールド

訂正-トランプ氏、ハリス前副米大統領の警護打ち切り

ビジネス

再送米PCE価格、7月前年比+2.6% コアは5カ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界がうらやむ国」ノルウェーがハマった落とし穴
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 10
    自らの力で「筋肉の扉」を開くために――「なかやまき…
  • 1
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 2
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 3
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 4
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が…
  • 5
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 8
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 9
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 10
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中