最新記事

米社会

悪者にされた金持ちたちの大逆襲!

2009年8月6日(木)14時30分
ジョニー・ロバーツ

 英高級車ブランド、ベントレーのクリストフ・ジョルジュ社長は、いまアメリカは「自責」の念に駆られていると書く。それでも、イギリスのクルーにある同社工場の4000人の従業員は「ベントレーを所有するのが悪」などという考えを受け入れないはずだと付け加える。

 贅沢バッシングの最大のターゲットは恐らく自家用ジェット機かもしれないと、アンダーセンらは口をそろえる。08年秋、米政府の支援を求めてワシントンにやって来た米自動車大手ビッグスリーのCEOは、3人とも自家用ジェットに乗ってきたことで袋だたきに遭った。その後、彼らは会社が保有するジェット機を減らした。

 また450億ドルの公的資金の注入を受けているシティグループは、幹部用に5000万ドルのジェット機を注文していることがばれて注文をキャンセルせざるを得なくなった。

 過剰な出費に見えるかもしれないが、自家用ジェットは1500億ドル産業で、約100万人の雇用を生み出していると、高級自家用機メーカー、ホーカー・ビーチクラフトのW・W・ボイスチャーCEOは言う。自家用ジェット機に対するポピュリスト的な反感のおかげで、業界は既に3万人の職を失った、と彼は主張する。

金持ちバッシングは金になる

 CEOや富や贅沢を攻撃するのは、「マスメディアやオバマ政権、そしてアメリカ人の97%にとって」商業的あるいは政治的に好都合なのかもしれないと、ミシシッピ大学雑誌革新センターのサミル・フスニ所長は言う。

 ロブ・リポートが少数のお金持ちを精力的に弁護しようとするのは驚くに当たらない。同誌の読者は、平均54歳、世帯年収121万ドル、主たる住居の資産価値は160万ドルで、そのほかに338万ドル相当の不動産を所有している。

 贅沢中の贅沢を集めた年1回の別冊「ベスト・オブ・ザ・ベスト」などは、まさにフォーブス誌の世界億万長者ランキングに入るような人向けのショッピングリストだ。

「こういう時代に、3%の少数派を擁護するのは勇気ある行為だ。だが、それが彼らの収入源でもある」と、フスニは言う。だから、盲目的に金持ちを擁護したとしてもこの雑誌を責めるわけにはいかないだろう。

[2009年7月15日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:司法の掌握目論むトランプ氏、側近が描く人事と

ビジネス

アングル:企業投資はドイツからフランスへ、マクロン

ワールド

原油先物、週間で2%超安 堅調な米経済指標受け

ワールド

米大統領選でトランプ氏支持、ブラックストーンCEO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目の前だ

  • 2

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」...ウクライナのドローンが突っ込む瞬間とみられる劇的映像

  • 3

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリン・クラークを自身と重ねるレブロン「自分もその道を歩いた」

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    この夏流行?新型コロナウイルスの変異ウイルス「FLi…

  • 6

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 7

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 8

    テストステロン値が低いと早死にするリスクが高まる─…

  • 9

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 10

    日本を苦しめる「デジタル赤字」...問題解決のために…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 7

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 10

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中