最新記事

アメリカ経済

大き過ぎても潰されたGMの明日

ついに連邦破産法11条を申請した自動車業界の巨人はスピード再建できるか

2009年6月2日(火)18時05分
バレット・シェリダン(ニューヨーク支局)

栄華はいずこ かつてGMの栄光の象徴だったキャデラック Arnd Wiegmann-Reuters

 世界の予想通り、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)が破産した。負債総額は約1730億ドルに上るが、資産はその半分にも満たない822億ドル。最近はこんな金額に慣れっこになってしまったが、それでも膨大な数字だ。500億ドルで私たちが顔色を変えることはもうないが、1000億ドルという単位はやはりインパクトが強い。

 証券大手リーマン・ブラザーズの破産を思い出してみよう。同社は6130億ドルの負債を抱え、しかも取引先は世界中に広がっていた。それに比べればGMの破産はまだシンプルとも言える。

 金融情報サービスのブルームバーグはGMについて、「1970年の2カ月間のストで、その年のアメリカ全体の第4四半期の国内総生産(GDP)が4・2%下落するほど存在感があった」と指摘している。しかし現在のGMは、少なくとも調査会社ムーディーズ・エコノミー・ドットコムのエコノミスト、マーク・ザンディがブルームバーグに語った限りにおいては、グローバル化する経済全体の中ではさほど重要でない。

 にもかかわらず、GM破産が無視できないのは精神的インパクトが大きいから。だからこそ、ホワイトハウスはこの企業を国有化したのだ。

時価総額300億ドルは夢物語?

 オバマの計画の基本は、この企業を「悪いGM」と「良いGM」に分割させるという内容だ。債権者の手に残るのは悪いGMで、連邦政府や従業員組合は良いGMの90%を所有する。

 債権者には良いGMの残り10%が与えられることになる。そして新生GMが時価総額300億ドルに達したときには(あくまで仮定の話だ)、さらに15%を追加取得できる新株引受権も受け取れる。とはいえこんな数字は04年以来達成できていない。GMがまともだったときでも、だ。

 オバマ政権が手続きを早く進めたがっているので、計画が現実になりそうな気配はある。5月1日に破産申請した自動車大手クライスラーは驚くべき速さで裁判所での手続きを終え、6月1日にはフィアット社への事業譲渡が承認された。

 GMの場合、カギとなるのは十分な数の債権者が政府の計画を認めるかどうか。先週末の時点では、まだ全体の3分の1しか同意していなかったが。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

核保有国の軍拡で世界は新たな脅威の時代に、国際平和

ワールド

米政権、スペースXとの契約見直し トランプ・マスク

ワールド

インド機墜落事故、米当局が現地調査 遺体身元確認作

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、円安で買い優勢 前週末の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中