最新記事

NIGO(デザイナー)

世界が尊敬する
日本人 part2

文化と時代を超えたジャパニーズたち
最新版は7月1日発売号に掲載!

2009.06.29

ニューストピックス

NIGO(デザイナー)

NYキッズがあがめるカリスマ

2009年6月29日(月)15時47分
佐伯直美(東京)、ジェニファー・バレット(ニューヨーク)

 穏やかな口調、繊細で伏し目がちな視線。迷彩柄の帽子にポップなイラスト入りのTシャツ。ひと目見ただけでは、彼が米ヒップホップ界で最もリスペクトされている日本人とは誰も思わないだろう。

 30代のデザイナー、NIGOが93年に東京で始めたブランド、ア・ベイジング・エイプ(通称BAPE)がアメリカで注目されはじめたのは数年前。キャンディーのようにカラフルなBAPEのスニーカーを、一部の人気ラッパーが履きはじめたのがきっかけだ。

 噂はすぐに口コミで広まり、NIGOはヒップホップ界の人気デザイナーに仲間入りした。アンディ・ウォーホルが創刊したインタビュー誌が表紙に起用する注目ぶりだ。ファンには、グラミー賞受賞者のカニエ・ウエストやJAY-Zなど大物スターも多い。

 グウェン・ステファニは、「原宿ガールズ」でこう歌う。「NIGOがア・ベイジング・エイプを作ったときに世界は逆転/私って高いものが好みなの」

 ブランド好きの心をくすぐるのは、トレードマークの猿のマークや迷彩柄に鮮やかな色を利かせ、ひと目でBAPEとわかるデザイン。だが最大の魅力は、どの商品も数が限定されている点だろう。

 「店に出たときに買わないと、2度と手に入らない」と、ブルックリンでスニーカー専門店プレミアムグッズを営むクラレンス・ネーサンは言う。「同じ色の靴でも素材が違う。NIGOは同じことを繰り返さないところが天才的だ」

東京の今を宿すデザイン

 NIGOいわく、数限定の理由は単純。「自分が人と同じものは着たくないから」だ。93年に原宿で自作のTシャツを扱う店を始めたころから、この姿勢は変わらない。「Tシャツも今の10倍は売れると思う。でも一つの商品の量を増やすなら、型数を多くして全体量を増やしたほうがいいですね」

 昨年末にニューヨークのソーホー地区に店を開いた際は、最新の商品を手に入れようと地元の若者が行列をつくった。人気のスニーカーは185~225ドルだが、店ができる前は転売サイトや専門店で300ドル以上の値がついた。

 「まさかこんなことになるなんて思わなかった」と言うNIGOだが、ここ数年BAPEをはじめさまざまな日本のブランドや文化が注目される状況を、ブームとは考えていない。「今までは欧米から買う側だったけど、今度は売る側になって同じ立ち位置になった」

 ニューヨーク滞在中のある日、日本の大手ブランドの大きな店を見たときには危機感を覚えた。これが東京や日本のスタイルと思われるのは悔しい――この思いが進出を決めるきっかけになった。「アメリカにもヨーロッパにも影響を受けていて、親しみやすいけど見たことがない。それが東京のもの」とNIGOは言う。「売れる売れないは別にして、リアルな東京のスタイルを見せたかった」

 今月には台湾、来年は香港とロサンゼルスにも進出する予定。服以外にも手がけたいものは無数にある。すでに日本ではBAPEのヘアサロンやカフェをプロデュースし、ペプシと組んでフィギュアや迷彩柄の缶も手がけた。「チャンスがあればホテルもやりたい。ライフスタイルという意味では、全部コーディネートできるから」

 猿のマークと迷彩柄をあちこちにちりばめた超高級ホテルが誕生する日も、遠くないかもしれない。

[2005年10月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マレーシアの肥料メーカー、新規受注を停止 中東紛争

ビジネス

独化学大手BASF、一部で最大30%値上げ コスト

ビジネス

南ア2月インフレ率、目標の3%に低下 対イラン戦争

ワールド

レバノン各地でイスラエルの空爆、首都中心部で少なく
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 2
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 3
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 4
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 5
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 6
    モジタバの最高指導者就任は国民への「最大の侮辱」.…
  • 7
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 8
    ガソリン価格はどこまで上がるのか? 専門家が語る…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    「危険な距離まで...」豪ヘリに中国海軍ヘリが異常接…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 3
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 8
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    住宅建設予定地に眠っていた「大量の埋蔵金」...現在…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体に…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中