最新記事

オバマは二枚舌で口先だけ

オバマのアメリカ

チェンジを掲げた大統領は
激震の超大国をどこへ導くのか

2009.04.24

ニューストピックス

オバマは二枚舌で口先だけ

経済再建に力を注ぎ、超党派を目指すと主張していたのに、予算教書は矛盾だらけ。「責任」を語った大統領の言行不一致が露呈した

2009年4月24日(金)07時20分
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト)

 正直で、勇気があって、率直で、普通の政治家とは違う----バラク・オバマ米大統領のことをそう考えているなら、彼の政権が示した予算教書の中身は見ないほうがいい。もし見れば、オバマはジョン・F・ケネディ以来の歴代大統領と重要な共通点があるという結論に達するはずだ。

 彼は有権者が求める政府支出に必要な税を徴収しようとしない。それは過去48年間のうち43年もアメリカの財政が赤字だった理由だ。

 オバマは人をごまかすのがうまい。常に自分がやっていないことをやっていると主張し、巧みな言辞でごまかす。「新しい責任の時代」を論じ、今回の予算で「財政規律を回復するために必要な、厳しい措置を取りはじめた」と主張しているが、それは違う。

 今日の不況下では、大幅な財政赤字が何年か続くことは避けられない。オバマが再選された場合、2期目の最後の年となる2016年には経済はとっくに回復しているだろう。だがその時点での財政赤字は6370億ドル、GDP(国内総生産)の3・2%になると、行政管理予算局は予想している。それはロナルド・レーガン大統領の最後の年、88年の財政赤字に匹敵する(GDPの3・1%)。

 サービスを提供するコストとして政府が必要とする税金を、国民は喜んで支払うべきだ。だが税の重荷が恩恵に見合わなければ、政府支出には価値がない。

予算に潜む大きなリスク

 オバマが「責任」を取る気なら、政府の規模と役割について率直な対話を進めているはずだ。誰が援助を受けるべきで、それはなぜか。政府が肥大しすぎれば、経済成長を妨げるおそれはないか。

 こうした議論はすでに行っているとオバマは言う。だが、政府の援助を当然の権利と考えるような人々と対決せず、巨額の政府支出の一部が公益にそぐわない可能性についても検討していない。

 オバマは、自分が提案した予算に大きなリスクが潜んでいることを認めるべきだ。それが責任ある態度というものだろう。国防は昔から政府の最優先の仕事だった。オバマの予算教書では、08年に全体の20%だった国防費を16年には全体の14%に減らす。そうなれば30年代以来、予算全体に占める国防費の割合は最も小さくなる。

 こうした国防費の減少はイラク撤退による大幅な節約と、今よりはるかに安全な世界を前提としている。世界情勢が予想どおりにならなければ、財政赤字はふくらむ。

 オバマの言葉と現実のギャップは予算にかぎらないし、それが及ぼす影響も予算だけにとどまらない。調査会社ウィルシャー・アソシエーツの算定では、株式市場は09年の年初以来23・68%も下落し(3月6日時点)、時価総額で2兆6000億ドルが失われた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2

ワールド

ロシア、北朝鮮にドローン技術移転 製造も支援=ウク

ビジネス

米6月建設支出、前月比0.4%減 一戸建て住宅への

ビジネス

米シェブロン、4─6月期利益が予想上回る 生産量増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中