コラム

コロナ危機が日米同盟を強固にする4つの理由

2020年05月07日(木)15時10分

トランプが退場すれば日米関係は今より強固に KIMIMASA MAYAMA-POOL-REUTERS

<トランプが退場し中国がさらに台頭すれば、アメリカにとって日本の重要性は一層高まる──。本誌「ポストコロナを生き抜く 日本への提言」特集より>

アメリカが社会主義陣営と覇権を争っていた1980年代、当時のロナルド・レーガン米大統領は、アメリカを「丘の上の輝く町」になぞらえた。世界を善へ導く「進歩と自由と民主主義の理想国家」という意味合いだ。

2020050512issue_cover_200.pngだが新型コロナウイルスの感染拡大が、全てを変えた。いま私たちが目にしているのは、中国が世界中にマスクを届けようとしたり、ワクチンを開発しているドイツ企業からアメリカがその権利を独占しようとしている姿だ。

新型コロナウイルスは世界秩序を逆転させかねない。そのなかで少なくとも日米関係の観点からは、両国の絆をさらに強固にする理由が4点考えられる。

1点目。今後はグローバル化より地域主義が力を持つ。既にアメリカは中国よりも、メキシコやカナダとの取引を増やしている。

ドナルド・トランプ米大統領が来年ホワイトハウスを去れば、後を引き継ぐ民主党の大統領(おそらくジョー・バイデン前副大統領)は日本と接近を図る。地域主義が優勢になるにつれ、アメリカは中国を封じ込めるために日本に期待を寄せるだろう。アジアの安全保障における日本の役割は、より重要になるはずだ。

2点目。中国がウイルス対策に成功しているように見えるため、権威主義は予期せぬ大惨事に有利と考える向きもある。だが、日本や韓国、台湾、ニュージーランド、ドイツなど、リベラルな民主主義国家もうまくやっている。G7内でも重鎮となった日本は、「丘の上の輝く町」の役割を取り戻そうとするアメリカの試みに欠かせない同盟国となる。

移民の重要性も認識させた

3点目。トランプの新型コロナウイルス対策が散々なため、米東部・西部の各州は互いに手を組み、独自の対応に乗り出すことを決めた。しかしトランプは、個々の州が設定した自主隔離の基準に抗議するよう人々をたき付けてさえいる。感染によって愛する人を失った人々もいるなかで、強い姿勢に出ることを認めた大統領の呼び掛けは大統領選で浮動票の行方を大きく左右しかねない。

トランプの退場は、日米関係にプラスの影響を与えるだろう。民主党の大統領が誕生すれば、中国の台頭を抑えるために今より日本と緊密に連携しようとする可能性が高い。

最後のポイント。新型コロナウイルスの感染拡大の最も痛ましい象徴の1つは、ボリス・ジョンソン英首相だ。彼は陽性と判定され、集中治療室に入った。危機的な状況を迎えたとき、彼の命を救った2人の看護師がいた。共に移民だった。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 自社株

ビジネス

英中銀は8日に0.25%利下げへ、トランプ関税背景

ワールド

米副大統領、パキスタンに過激派対策要請 カシミール

ビジネス

トランプ自動車・部品関税、米で1台当たり1.2万ド
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story