コラム

東京都議選の争点は、五輪とコロナだけでなく山のようにある

2021年06月30日(水)14時30分

3点目は財政です。東京都にとって財政上の余裕資金にあたる財政調整基金(財調)が急速に底をつく事態となっています。2019年度末には約9032億円あった財調の基金が、感染拡大防止協力金の支給などコロナ禍対策に資金を投入した結果、最新の報道によれば2021年度末には21億円程度となる見通しだというのです。

もちろん、不正に関しては厳しく摘発すべきですが、協力金の支給に関しては都議会の決定であり、世論も後押しした政策です。ですから今になって否定したり、犯人探しをするのは違うと思います。そうではあるのですが、結果として基金が激減したのは事実であり、財政に関して根本的な立て直し策を立てなくてはなりません。

アメリカのバイデン政権の場合は、コロナ禍で疲弊した各州財政には連邦(国)が巨額の支援を行いつつあります。同じように国に支援を求めるのか、それとも増税をするのか、あるいは少なくとも都民には「ふるさと納税」を禁止して税収確保に動くのか、今ここで議論をしておくことは大切だと思います。

これからの東京都は巨大な高齢単身世帯を抱えていくことになります。人生の長い時間を東京の経済に貢献してきた世代に対して、東京都は必要な生活環境を維持する責任があります。その責任を全うし、そしてその後も東京という都会が生き残るために、財政に関する議論から逃げるべきではありません。

このように東京都政には、議論すべき点、つまり選挙戦の争点が山のようにあるわけで、あらためて真剣な政策論議を通じて民意が示されるよう願うばかりです。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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