コラム

新型コロナ対策「日本式」を継続するべきか?

2020年04月02日(木)16時20分
新型コロナ対策「日本式」を継続するべきか?

東京では「感染爆発」に至っていない現状でも緊張が医療崩壊への懸念が高まっている Issei Kato-REUTERS

<既に感染爆発が起きてしまった欧米各国と比べて、感染クラスターの封じ込めを主軸とする日本の対策は現状では効果を上げているが......>

アメリカの感染爆発は、ニューヨークがピーク予想まで数週間とされる一方で、ルイジアナ州のニューオーリンズ、ミシガン州のデトロイトなどが厳しい状況となっています。私の住むニュージャージー州もニューヨークの隣りという地理的な条件も重なって、連日多くの感染者、そして死亡者の報告があります。

そんな中、3月31日にトランプ大統領は、今回の新型コロナウィルス流行による全米の死者は「10万人から24万人の範囲」になるという見通しを示すとともに、これからの2週間は非常に痛切で厳しい(parinful, tough)事態となると述べました。以前とは全く別人のような重たい口調に、アメリカ社会には改めて衝撃が走っています。

そんな中で、4月1日現在のアメリカの数字は、

▼感染者累計19万0740人、▼死亡者累計4127人。

となっています(NJドットコム調べ。CDC発表数値に、直近の各州のデータを加えたもの)。これに対して、同じく4月1日現在の日本の数字は、

▼感染者累計3207人、▼死亡者累計80人。

です(NHKによる。2日早朝時点)。

依然として、死者数で比較すると日本の場合は低く抑えられています。

こうした日本の状況については、生活習慣の違い、医療水準の高さ、あるいは検査対象人数をランダムには拡大しない政策など、色々な要素が重なった結果と考えられますが、何と言っても「クラスター戦略」つまり「感染の連鎖を見える形にして、その先への感染を抑え込む」という方法論が現時点では機能していることが大きいと思われます。

この方法論を主唱して実戦の指揮を事実上取っているのが、東北大学の押谷仁教授と、北海道大学の西浦博教授と言われています。

ここ数週間は、孤発例(こはつれい)つまり感染経路をたどれない陽性患者が多く発見され、特に東京では感染拡大の懸念が高まっています。ですが、こうした状況においても厚生労働省のクラスター対策班は、コツコツとクラスターの「見える化」つまり感染者の濃厚接触者のフォローと、感染経路のさかのぼりといった調査を続けています。

その結果として、例えば中国との往来などを原因とした「第1波」の中では、

▼ダイヤモンド・プリンセス下船者からのクラスター発生の阻止
▼武漢からのチャーター機での帰国者からのクラスター発生の阻止
▼東京の屋形船クラスター
▼愛知のクラスター
▼和歌山のクラスター
▼北海道における北見と札幌のクラスター
▼大阪におけるライブハウスのクラスター

などは、感染経路を「見える化」すると同時に、更に感染の連鎖が続くことをほぼ抑え込んでいます。(屋形船は、台東区の病院におけるクラスターへの連鎖の可能性あり)

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

ニュース速報

ワールド

英政府、新型コロナ患者への長期的影響調査へ 100

ビジネス

イタリア、自動車・観光産業支援策を検討=首相

ビジネス

シェル、英国への本社移転の可能性排除せず─CEO=

ワールド

豪ビクトリア州、NSW州との州境閉鎖へ メルボルン

MAGAZINE

特集:Black Lives Matter

2020-7・ 7号(6/30発売)

今回の黒人差別反対運動はいつもとは違う──「人権軽視大国」アメリカが変わる日

人気ランキング

  • 1

    中国・三峡ダムに「ブラックスワン」が迫る──決壊はあり得るのか

  • 2

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 3

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 4

    新型コロナのワクチンはいつになったらできる?

  • 5

    韓国、Netflix急成長にタダ乗り議論で法改正 政府は…

  • 6

    オーストラリア経済の長期繁栄に終止符 観光・教育・…

  • 7

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 8

    「バイデン大統領」に備える投資家 ドル売りに米株保…

  • 9

    東京都、新型コロナウイルス新規感染111人 4日連続3…

  • 10

    東京都、新型コロナウイルス新規感染131人 3日連続3…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 4

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 5

    英首相ジョンソン、香港市民の英市民権取得を確約 中…

  • 6

    スウェーデンの悪夢はパンデミック以前から始まって…

  • 7

    東京都、3日の新型コロナ新規感染は124人 小池知事「…

  • 8

    韓国「炭酸カリウム」を不当廉売? 経産省が調査開…

  • 9

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 10

    北京で6月にクラスター発生したコロナウイルス、東南…

  • 1

    国家安全法成立で香港民主化団体を脱退した「女神」周庭の別れの言葉

  • 2

    世界最大の中国「三峡ダム」に決壊の脅威? 集中豪雨で大規模水害、そして...

  • 3

    孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに

  • 4

    東京都、新型コロナウイルス新規感染107人を確認 小…

  • 5

    ポスト安倍レースで石破氏に勢い 二階幹事長が支持…

  • 6

    自殺かリンチか、差別に怒るアメリカで木に吊るされ…

  • 7

    中国・超大国への道、最大の障壁は「日本」──そこで…

  • 8

    街に繰り出したカワウソの受難 高級魚アロワナを食…

  • 9

    宇宙に関する「最も恐ろしいこと」は何? 米投稿サ…

  • 10

    「この貞淑な花嫁は......男だ」 イスラムの教え強い…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!