コラム

大阪ダブル選、自民と共産が共闘する理由は単純

2019年03月19日(火)16時00分

そうであれば、維新の側に正義はあるのでしょうか? これも不十分だと思います。維新の主張する「府と市の合併=都構想」というのは、確かにコストカットでありリストラですが、それ以上でも以下でもありません。過剰な二重行政をあらためるのは良いにしても、そのように「官の簡素化」をする分、民間の経済が活性化されなくてはならないのです。

この点に関しては、亡くなった堺屋太一氏の主張した「道頓堀をプールに(文字通りの意味ではなく、大胆にインバウンド対策の投資をすること)」であるとか、橋下徹氏の主張している「リニア新幹線早期誘致で、中央官庁の一部を大阪に」といったアイディアが断片的にあるだけで、維新サイドの構想は全く不十分です。

それでは、自民+公明+共産のグループに経済成長への明確な青写真があるのかというと、それもありません。せいぜいが、国の「訪日外国人4000万人計画」に従って「もっとインバウンドを拡大」というぐらいです。

一つのアイディアとしては、2025年の大阪万博の公用語を英語にして、思い切りインバウンド効果を狙い、同時にアジア各国のパビリオンを誘致、その勢いで、大阪を「英語で商談、契約、訴訟、決算、資金調達のできる」国際ビジネス都市に脱皮させて「商都復権」を図るというアイディアです。

これが実現すれば、シンガポールや香港に流れたアジアのビジネスセンター、金融センターとしての機能を奪い返すことができ、本当の意味で高付加価値、先進国クオリティの経済を再生することができます。

そうした発想が、自民+公明+共産のグループにも、維新の側にも見られないのは残念でなりません。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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