コラム

トランプは北朝鮮核問題を外交解決へと導けるか

2017年11月02日(木)15時45分

ロシアは、この3カ国とは事情が異なります。シベリア東部の開発において、北朝鮮の廉価な労働力の活用が進む一方で、北朝鮮とは国境を接しているとはいえ、万が一トラブルが発生しても、ダメージは少ない地理的状況にあります。ですから、全く勝手な話ではありますが、朝鮮半島情勢に対処する上での「自由度」があるのです。

失うものが少ない中で、漁夫の利や焼け太りを期待できるのがロシアの立ち位置であり、最近になって北朝鮮への援助を拡大している動機は必ずしも純粋ではないと見ることが可能です。今回は、六者会合という枠組みではなく、ロシアを外した「日米、米韓、米中」の枠組みで調整が進むのは良いことだと言えるでしょう。

この3セットの首脳会談ですが、この順番というのが重要です。トランプ大統領がまず訪中を先にしてしまうと「新体制祝賀」というニュアンスが出るばかりか、北朝鮮情勢への対応についても「習近平主導」という印象が広まってしまいます。ですが、反対に日米と米韓での「合意」を形成したのちに、訪中するのであれば、調整役としての威信を見せることは可能になるからです。

安倍総理の「北朝鮮側から対話をしてほしいと言ってくる状況」を意識した発言と前後する形で、31日には韓国が「中国とあらゆる分野での協力や交流を正常化」させることで合意したと表明しています。今回の一連の首脳外交、そしてAPECを意識した流れは様々な形で表面に出つつあると言って良いでしょう。その流れというのは、外交的解決による核放棄という方向性です。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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