プレスリリース

微生物を高度利用したバイオスマートコンクリートを産学官連携で共同開発

2025年01月08日(水)11時15分
安藤ハザマ(本社:東京都港区、代表取締役社長:国谷 一彦)は、静岡理工科大学(所在地:静岡県袋井市、理工学部土木工学科教授:西田 孝弘)、愛媛大学(所在地:愛媛県松山市、同大学大学院理工学研究科理工学専攻教授:河合 慶有)および港湾空港技術研究所(所在地:神奈川県横須賀市、構造研究領域主任研究官:小池 賢太郎)と共同で、微生物を高度利用したバイオスマートコンクリートの開発を進めています。
その一環として、pH11~12の強アルカリ条件下でも代謝活動(注1)と増殖が可能な強アルカリ耐性菌「AH株」の獲得に成功しました。これにより、本共同開発の飛躍的な進展が期待されます。


1. 共同開発の概要
安全で強靭なインフラシステムの構築のため、鉄筋コンクリート構造物の長寿命化技術が求められていますが、その実現のためには、コンクリート中の鉄筋の腐食を防止することが重要です。
本共同開発では、微生物の代謝活動により、コンクリート中の溶存酸素(注2)を消費し、かつ、酸素と水の供給路となるひび割れを自己治癒することで、酸素や水を不足させ鉄筋腐食を防止するバイオスマートコンクリート「BiSCo」の開発を進めています。


2. 強アルカリ耐性菌「AH株」の特長
一般的な好気性(注3)微生物は、高pH環境では死滅あるいは芽胞となって休眠しており、pHが9程度より低い環境にならなければ代謝活動を行えません。そのため、強アルカリ材料であるコンクリート中での代謝活動が制限されてしまうという課題がありましたが、このたび獲得した強アルカリ耐性菌「AH株」は、pH11~12の強アルカリ条件下でも代謝活動と増殖が可能で、芽胞形成機能(注4)も有します。


3. 漏水実験
コンクリート練混ぜ時にAH株および栄養素を添加したバイオスマートコンクリートで供試体を作製し、漏水実験(注5)を行いました。実験の結果、繰り返し導入したひび割れが自己治癒され、漏水が止まったことを確認しました(写真1)。

画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/421913/LL_img_421913_1.jpg
写真1:ひび割れの自己治癒状況

4. 今後の展開
今後は、鉄筋腐食抑制効果ならびにひび割れ自己治癒効果の実証を進め、実用化に向けた取り組みを推進します。


(注1)代謝活動
好気性微生物の呼吸、すなわち酸素を消費して二酸化炭素を排出する活動のこと。
(注2)溶存酸素
水中に溶け込んだ酸素のこと。
(注3)好気性
酸素を利用した代謝機構を備えた微生物のこと。
(注4)芽胞形成機能
菌の生育環境が悪化した際に形成される耐久細胞で、熱などの環境ストレスに強く死滅しない。
(注5)漏水実験
供試体上面に常に水を溜めて置き、供試体下面のひび割れ部における漏水の有無でひび割れの自己治癒状態を判定する実験。


詳細はこちら
プレスリリース提供元:@Press
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