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【写真特集】壁の「傷痕」に刻まれた 消えゆく都市の歴史〜台湾
URBAN SCARS
Photographs by Yi-Hsien Lee
取り壊された建物の輪郭が幽霊のように隣接した建物の外壁に残る。こうした「傷痕」は、時間の経過と避けられない変化を示している
<限られた土地で解体と再構築のサイクルが絶えず繰り返される台湾。現代の都市景観に張り付いた過去の建築物の痕跡は、過ぎ去った時代の記憶や建築様式、アイデンティティなどの重層的な歴史を物語る。沈黙の証言者と台湾の建築写真家・李易暹(リー・イーシン)の音なき対話「Scar Tissue(瘢痕〔はんこん〕)」>
台湾の都市部を歩くと、古い建物の外壁に不思議な跡が付いているのを見かけることがある。かつて隣接して立っていた建物の輪郭や部屋の区画、壁に取り付けられていた物などがへばりつくように残されているのだ。建築写真家の李易暹(リー・イーシン)は、これらを「Scar Tissue(瘢痕〔はんこん〕)」と呼ぶ。
李によれば、都市を1つの巨大な生命体と捉えると、建物を壊す行為はその生命体に傷を負わせることに等しい。傷はやがて癒えて新しい構造物に生まれ変わることもあれば、過去の痕跡として深く刻まれることもある。
象徴的な1枚がある。建物の外壁に埋め込まれた、小石のようなタイルがあしらわれた浴槽の残骸だ(次ページ:1番目左)。同じような浴槽が李の祖父母の家にあり、これを見つけた時、当時の記憶が瞬時にあふれ出したという。このセンチメンタルな発見と、失われゆく歴史を保存する重要性を感じたことを機に、李は都市の「傷痕」を記録するようになった。
土地の限られた台湾では、解体と再構築のサイクルが絶えず繰り返される。特に台北では再開発が進み、古い家屋が次々に近代的なビルに建て替えられている。残された建物の壁に残る、かつての人々の暮らしを映し出す痕跡は、単なる解体の記録ではない。都市の歴史の断面であり、変化し続ける社会の中で静かにたたずむ記憶の証人だ。
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Photographs by Yi-Hsien Lee
撮影:李易暹(リー・イーシン)
建築とインテリアを専門とする台湾出身のフォトグラファー・アーティスト。ユニークな構図を用いて空間や構造を表現し、米「Architecture MasterPrize 2022」年間最優秀写真家賞、富士フイルム「GFX Challenge Grant Program 2024」優秀賞などを受賞
【連載第1014回】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2026年1月20日号掲載
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