コラム

韓国「戒厳令・弾劾騒動」に至るまでの歴史を振り返る映画4選

2024年12月30日(月)12時05分
韓国, 韓国政治, 韓国映画, 光州事件

今回のAIイラスト:市民への弾圧を乗り越え民主主義は強くなった AI GENERATED ART BY NEWSWEEK JAPAN VIA STABLE DIFFUSION

<最近の韓国情勢をへの見方が深まる、しかもエンタメとしても文句なしに面白い映画を時事芸人のプチ鹿島さんが紹介します>

12月に韓国の「非常戒厳」が報じられてから、就寝前に韓国映画を何本もおさらいして過ごし、「今」と「過去」を深く考えることができた。

まずは日本では今年公開の『ソウルの春』(キム・ソンス監督)。


1979年10月26日、独裁者とも言われた韓国大統領が側近に暗殺された。すると、暗殺事件の捜査本部長に就いた保安司令官が12月12日にクーデターを決行。またも新しい軍事独裁への道が始まったのだ。「ソウルの春」は民主化を期待した国民にとって、ほんの一瞬の春だった。映画の公式サイトには「国民の4人に1人が鑑賞」とあるから、韓国でも若い世代は既に歴史となったこの事件に衝撃と興味を覚えたのだろう。

『ソウルの春』予告編

次に見たのは『タクシー運転手 約束は海を越えて』(チャン・フン監督、2017年)。今回の非常戒厳を受けて改めて見ると感じ入ることが多かった。『ソウルの春』でも描かれた保安司令官、全斗煥(チョン・ドゥファン)がクーデター翌年に「非常戒厳令拡大」を宣布し、民主化を求める市民を弾圧した光州事件が題材だ。

韓国人タクシー運転手は大金目当てにドイツ人記者を乗せて光州に潜入する。そこでの光景は想像を絶した。検問や情報統制で市民の虐殺を全く知らなかったからだ。

この作品では情報を伝える意義も考えさせられた。本来ならば知りたい情報は、現場へ行って自分で取材して確かめて納得すればいい。しかし皆忙しい。だから記者は情報を確認してくれる代理人だと私は考える。

『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』予告編

プロフィール

プチ鹿島

1970年、長野県生まれ。新聞15紙を読み比べ、スポーツ、文化、政治と幅広いジャンルからニュースを読み解く時事芸人。『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』(双葉社)、『お笑い公文書2022 こんな日本に誰がした!』(文藝春秋)、『芸人式新聞の読み方」』(幻冬舎)等、著作多数。監督・主演映画に『劇場版センキョナンデス』等。 X(旧Twitter):@pkashima

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル指数下落、雇用統計は強弱混合 失

ビジネス

米国株式市場=ダウ・S&P続落、経済指標を精査 エ

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story