コラム

今年は「お投資玉」でお金を育てるのはいかが(パックン)?

2023年01月10日(火)17時12分
パックン、投資、資産運用

人生にはお金を「育てる」意識が必要だ Khanchit Khirisutchalual/iStock.

<投資は資産を増やすというより、自分の人生の手綱を握る「ファイナンシャル・コントロール」のために必須の方法。お年玉感覚で挑戦しては?>

奇跡的な出会いとでもいうのか、日本とアメリカの文化が重なり合い、社会に大きな喜びを与える、素晴らしい発明が生まれることがある。その代表例が......照り焼きバーガーかな。

なかなかそれを上回るものはないかもしれないが、2023年を迎えたこのタイミングで、僕からも新しい日米文化の融合を提案したい。

日本からは、「お年玉」を使おう。年頭に子供に現金を渡すこの伝統を、来日して初めて知った時は結構驚いた。「日本人はお金で子供の愛が買えるとでも思っているのか?」と。しかし少し考えてみたら、すぐ納得した。アメリカはお金ではなくクリスマスプレゼントを使っているが、似たような「愛の取引」が成り立っている。残念ながら、その取引の恩恵を受けているのは親ではなく、サンタさんだけどね。親への反抗があっても、子供はみんなサンタさんが大好きだ。なんか悔しい......。

一方、アメリカからは、毎年恒例のNew Year's Resolution(新年の決意)を使うことにする。これは、人それぞれが個人の発展や私生活の向上などを目指し、この一年間頑張ることを表明する、自分への約束だ。「5キロ減量する!」や「週に一回お酒を飲まない『休肝日』をもうける!」などが一般的な例。もちろん、元日に決意してもすぐに断念する「三が日坊主」な人も多いし「今年の決意は、去年の決意を実行すること!!」と、毎年言っている僕の父もいる。

でも、新年に心機一転、新しいルーティーンを習慣づけるこの文化をぜひ広めたい。特に今回おすすめしたいのは、一年どころか、一生メリットが受けられる決意。それは「ファイナンシャル・コントロール」というやつ。

日米で6割が「コントロール」できていない

フィナンシャル・コントロールというのは、お金と賢く付き合って、しっかりと個人の財産の手綱を握ることだ。それができていないアメリカ人は多い。急病などで突然1000㌦の出費があった場合、56%の人は預貯金でその額を賄えないというし、3分の1の家庭は収入の全てを生活費に費やしているという。

しかも、それは全員が貧困層というわけではなく、資産が5万ドル以上あってもギリギリの生活を送っている、いわゆるWealthy Hand to Mouth(お金持ちなのにその日暮らし)な家庭も20%近くいるという。資産があるのに、お金がない。翼があるのに、飛行できない、ペンギンやガチョウ、または昔の滝沢秀明さんのような状態だ。

日本にもお金に振り回されている、経済の主導権を握れていない人も多い。自己破産などのシビアなケースじゃなくても、お金が心配で希望通りの教育を受けられない、好きな仕事に挑戦できない、結婚や子育てをする余裕がない、老後が不安だ、などなど......こういった悩みは全部フィナンシャル・コントロールの話になる。

ちなみにアンケート調査によると、老後のお金が不安・不十分だと答える人はアメリカでも、日本でも6割を超えるそうだ。

ということで、年を取ることに備えるためにも、新年を迎えたタイミングで、お金と正しく付き合うことを決意しようではないか! それが今回の提案。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story