コラム

ベネズエラ式「マドゥロ・ダイエット」って何?

2019年02月02日(土)14時15分

マドゥロは国外からも支持を受けている。アメリカやイギリスはグアイドの主張を認めているが、ロシアや中国はマドゥロ政権の正当性を強調している。

両側の動機が透けて見える。チャベス政権のときから、ベネズエラはキューバと並んで「反米の社会主義ライン」を結成している。「キュバズエラ」と呼ばれるほど蜜月関係にあるこの2カ国はソ連から、そしてロシアからも支援を得て、アメリカの勢力圏に亀裂を走らせている。特にロシアは近年ベネズエラに爆撃機基地を作りたがり、イランとベネズエラとの協力により石油価格を操作する目的でさらに関係を強めているという。

もちろん、アメリカにとっては面白くない話だ。厄介な存在であるマドゥロ政権の崩壊を熱望している。だから、迷わずグアイドの暫定大統領宣言を承認した。それを受けて「他国の選挙への不法介入だ!」と、ロシアがけん制した。本音は、「それは俺らの仕事だ! 奪うな!」と怒っているんだろうけどね。

要注目なのは、アメリカとロシアが対立構造にあるなか、この先トランプ大統領がなんと言うのか、そしてアメリカはどう動くのかということ。トランプは今まで、米政府の諜報機関よりロシアのウラジーミル・プーチン大統領の言い分を信用したり、シリアからの米軍撤退を宣言したり、NATO離脱をほのめかしたりと、さまざまな場面でプーチンが喜ぶような言動をしている。しかし同時に米政府はロシアへの制裁を強化しているし、シリア撤退やNATO離脱を実行していない。対ロ政策においては特に、大統領の言葉と政府の動きは一致していない。

マドゥロVSグアイドのほかに、米VSロ、資本主義VS社会主義などなど、ベネズエラがさまざまな対決の土俵となりそう。でも個人的には、トランプVSプーチンになるのか、それともここでもトランプVSトランプ政権になるのか、これが一番気になる。お正月太りよりもね!

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プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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