コラム

バブルは弾けた

2021年02月26日(金)21時30分

たとえば、リーマンショックは、まさにそのものであり、サブプライムバブルはその前にとうに弾けていて、リーマン・ブラザーズの破綻も明らかで、サプライズとなったのは、米国政府が、これを救済しないと決定したことだった。後から振り返れば、ゴールドマン・サックスとリーマンの間の確執のせいだとか、単に救済金融機関が整わなかっただけだ、などさまざまな議論があるが、いずれにせよ、その後の金融機関の破綻はすべて救済され、今日でのそのほとんどが、以前のようなきらびやかさはなくなったとは言え、復活している。

リーマンショックは、1つの有名な金融機関が破綻しただけのことであり、なんら実質的な意味はなかった。後からリーマンを救済しても良かったのだが、そうしても意味はなかっただろう。なぜなら、リーマンが破綻するまでには債券市場、仕組み債市場はとうに弾けており、一般人も投資する上場株式の市場だけがバブル崩壊してなかっただけだったからだ。

バブル崩壊は規定路線

日本の1990年末の金融危機は、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行の破綻が印象に残るが、バブル崩壊の止めのきっかけは、三洋証券の破綻だった。相対的に影響の大きくない、小さな証券会社の破綻に過ぎない。しかも、その破綻は、単純ミスにより、破綻させる必要もなく、破綻させるつもりもなかったものがミスで破綻してしまったのだった。そして、それは取り返しがつかなかった。三洋証券そのものが重要なのではなく、きっかけとして機能してしまったからだった。

近いところでは、2013年のバーナンキショックがある。彼が、量的緩和の出口を示唆したことにより、バブルは崩壊した。これも効果はショック、きっかけを与えただけで、タイミングの問題だけだった。量的緩和の出口はいつかくるのであり、また、もはや出口に向かうのは当然だったし、政策として、正しかったのだが、タイミングが少しだけサプライズだった。

しかし、バブルがいつか弾けることはサプライズではなかったから、投資家たちは、当然のように、バブル崩壊のきっかけのホイッスルを聞いて、売りまくった。

さて、今回はどうだろうか。

FRBパウエル議長は、金融緩和の拡大を止めるつもりはまったくなく、インフレも3年は起きないだろうと、強調した。サプライズは何もない。ニュースも何もない。しかし、それで、国債利回りは急騰、つまり、米国債は大暴落したのである。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

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