コラム

バブルは弾けた

2021年02月26日(金)21時30分

今度の下げは一時的ではすまない可能性が高い(2月26日、東京) Kim Kyung-Hoon-REUTERS

<米国の長期金利が急上昇したのを合図に、アメリカでも日本でも株価が暴落した。とくに何のサプライズもない、期待通りで理論通りという珍しいケース。だからこそ、本物だ>

2月26日、日経平均株価は1200円以上の暴落となった。

何も驚くことはなく、バブルが弾けただけである。

この暴落が継続して、まっさかさまなのか、乱高下をしながら下がっていくのか、または、一度盛り返してから、さらに激しい乱高下を伴い下がっていくのか、いずれにせよ、バブルは弾けたか、弾けつつある。

バブルが弾けたのは当たり前のことで、バブルは弾けるからバブルなのである。しかし、これはバブルは弾けて初めてわかる、という世間の常識とはまったく違う。むしろ正反対だ。投資家たちは、全員、バブルの最中にバブルであることを知っている。

それどころか、バブルであるから殺到して投資してきたのであり、バブルにおいてはいつもそうだ。バブルには早く乗れば乗るほど儲かり、弾ける直前まで乗り続けるのが儲けを最大化するが、弾ける直前に降りるのは現実的ではないにもかかわらず、みなはらはらしながら、いつ弾けるか見極めようとしているのであり、それはバブルであることを200%理解しているのだ。

経済は順調に回復していた

さて、今回のバブル崩壊の問題は、きっかけがどこにもなかったようにも感じられる、ということだ。コロナショックどころか、コロナの収束の見通しが立ち、ワクチンも広まり、一部にはコロナ対策が順調でないと文句をいう人々やメディアもいるが、それは日本特有の贅沢、あるいはわがままで、世界中で妥協しながら進められている。

ワクチン摂取のプロセスで右往左往しているとメディアは騒ぐが、一方の経済は順調に回復しており、世界的に回復は予想を上回るペースで進んでいる。中国が最速で回復したが、米国も、失業者の増加数が急減しており、経済の回復に目処が立った。

世界1,2の経済大国が回復すれば、世界経済の見通しは明るい。

この結果、米国の国債金利が急上昇した。

これが株価暴落のきっかけであると同時に、理由である。

このあまりに普通でまっとうな理由でバブルが弾け始めたことが、今回のバブル崩壊を珍しいものにしている。

普通は、もっと後々まで語り継がれるような、何らかの事件が起きて、バブル崩壊、となるのである。そして、それは本来であれば、全面的なバブル崩壊をもたらすようなものではなく、ショッキングで象徴的だが、象徴に過ぎない事件によることが多い。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、銀行株売り 消費財に買い集まる=ゴ

ワールド

訂正-スペインで猛暑による死者1180人、昨年の1

ワールド

米金利1%以下に引き下げるべき、トランプ氏 ほぼ連

ワールド

トランプ氏、通商交渉に前向き姿勢 「 EU当局者が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中にまさかの居眠り...その姿がばっちり撮られた大物セレブとは?
  • 2
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機」に襲撃されたキーウ、大爆発の瞬間を捉えた「衝撃映像」
  • 3
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別「年収ランキング」を発表
  • 4
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    【クイズ】次のうち、生物学的に「本当に存在する」…
  • 7
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 10
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 9
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story