最新記事
シリーズ日本再発見

貧困について書くと悪辣なDMが大量に届く この日本社会で

2022年09月02日(金)16時15分
ヒオカ(ライター)

hiokabook20220902-3.jpg

写真は本文と関係ありません Imagesines-iStock.

外出自粛の呼びかけにある「家は安全な場所」という前提

「見えている景色の違い」を感じる場面は、生活のいたるところにある。

たとえば、コロナ禍での「ステイホーム」の呼びかけ。もちろん感染対策として外出を控えてもらうことは大事なことだろう。しかし、図書館の閉館のニュースを聞き、胸がとてもざわついた。家にエアコンがない、虐待や夫婦喧嘩が絶えず家にいられないという子どもにとって、公共の施設は居場所となりうる。

「家が安全であるという前提」があってこそ、ステイホームは成り立つ。

ステイホームの渦中、大学ではオンライン授業になり、校内への立ち入りが禁止になった時期もあったそうだ。しかし、そもそもネット環境がない、パソコンを買えないから持っていない、一人になれる空間がない。そんな大学生だっているはずだ。しかし、そういう人たちの存在は想定すらされていないのである。

「買い物は投票」というメッセージをSNSで何度も見ることがあった。ファストファッションなど安い製品は、その生産工程に搾取が潜んでいることが多いから、買うのは控えよう、というものだった。企業理念に賛同できないから、その会社の製品を買わない、という選択肢をとる人もいる。

もちろん、個人の心がけならばどうぞご自由にといったところだろう。しかし、ファストファッションを買う人や、自分の理念と合わない会社の製品を買う人を非難したり馬鹿にしたりする人まで現れた。

購買を決める要因を「理念」に委ねるのは、ある程度の経済力があってはじめてできることだ。とにかく安いものを、1円でも安くという姿勢が非難されるとき、「切り詰めないと生活が崩壊する」人たちの存在は視界に入っていないのだろう。

個人に見えている世界はそれぞれであり、すべてではない

同じ世界で同じ時を生きていても、見えている景色はまるで違う。相手の置かれている状況が見えなければ事情を慮ることもできない。そして時に誤解や摩擦、軋轢が生じてしまう。

見えている景色が違うが故に生じる軋轢で、深刻なものがあった。コロナで困窮する人々に、

「普段から備えておかないからそうなるんだ」
「そんな不安定な仕事に就くからいけないんだ」

そんな言葉を投げかける人が散見された。

日頃から貯金ができる収入を得られ、リモートワークに対応してくれる規模の会社に勤めている人には、少しでも休めば生活が脅かされ、非常事態でも出勤し続けなければならない人たちの存在は、視界に入っていないのかもしれない。

自分の想像が及ばない属性に対し、人はどこまでも冷酷になる。簡単に「自業自得」「支援に公金を使うべきでない」といったジャッジを下してしまう。

貧困家庭への支援に対するバッシングも、本当に根強いものがある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英の26年経済成長率見通し、0.8%に下方修正=I

ワールド

インドネシア外務省、米軍の領空飛行許可に慎重対応促

ビジネス

今年の米成長率3%超の可能性、7月までに以前の関税

ビジネス

アマゾン、衛星通信会社を116億ドルで買収 事業拡
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 3
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中