最新記事
シリーズ日本再発見

ウィズコロナの教育は「オンラインでやればいい」では解決しない

2020年07月10日(金)16時30分
島田昌和(学校法人文京学園理事長・文京学院大学教授)

偶然にもこの新型コロナウイルス蔓延の以前から準備していたのが、インターナショナルスクールのアオバジャパン・インターナショナルスクール(東京)を女子中高の敷地に誘致し、双方の教育を維持しながら、同時にお互いの生徒が刺激を与えあえる関係を築こうというプロジェクトである。

インターナショナルスクールに通わせる日本人家庭も増え、インターナショナルバカロレア(IB)という国際基準教育を導入する学校も増えてきている。であるが、日本の教育制度に則った学校と系列を異にするインターナショナルスクールが隣り合って教育するパッケージは日本で初めてなのである(同一法人が一つのキャンパス内にインターナショナルスクールと日本の学校教育制度に基づく学校を併設する例は、東京と大阪に1例ずつ存在する)。

両学校の生徒間の交流を盛んにし、IB校では重要なボランティア活動に本校で重視している周辺清掃活動を重ね合わせるとか、双方の生徒が取り組む課題解決型の探究活動を英語によって意見交換してほしいと考えている。

ちなみに日本のインターナショナルスクールの数は2005年データで117校、その生徒数2万人ほどである。インターナショナルスクールに通う日本人生徒は5000人弱いるようだ。このような立地をパッケージすることは、制限された生活の中でのグローバル教育維持の一つの手法ではないだろうか。

大学でも同様の例が昭和女子大学とテンプル大学の事例だろう。既に2019年秋からテンプル大学ジャパンは昭和女子大学の敷地の一部に移転を完了していて、まさに同じような仕組みである。

日本からもリモートで海外発信と交流を

今あるパッケージの中でグローバル教育を維持する方策はないものだろうか。どこの大学でもたくさんの国際プログラムを展開していて、交換留学生や留学生入試によって4年間学ぶ外国人学生など、多国籍の学生がキャンパスで学んでいた。そのほとんどがコロナによって帰国したり、新たな受け入れを中止している。海外に渡航していた日本人学生もそのほとんどを帰国させている。この秋からのプログラムも再開の見込みはない。

これを代替する手段は何だろうか。例えばチャットラウンジという少人数で近い世代の外国人と自由に会話できる空間を文京学院大学では運用しているが、それをオンラインチャットラウンジとしてリモートで英会話練習を始めている。

海外の提携先も予定していたプログラムのオンラインへの切り替えを提案してきている。カナダの提携大学はこの夏にリモートでの3週間英語研修プログラムを案内してくれている。英語圏の大学は非英語圏からの留学生や語学研修性が重要な財源でもあったので、それをつなぎ止めることに躍起だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買

ビジネス

中国外貨準備、4月は予想以上に減少 金保有は増加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中