最新記事
シリーズ日本再発見

「おもてなし」の精神で受動喫煙防止に取り組む京都

2016年10月20日(木)11時30分
高野智宏

「喫煙の有無を問わず、気持ちよく過ごしてもらいたい」

 一方、店頭表示ステッカーを掲示する店舗や宿泊施設の反応はいかなるものか。

「協議会の取り組みが始まった2年ほど前にご案内をいただき、すぐに協力させてもらった」。そう話すのは、京都きっての繁華街、四条河原町や四条烏丸にもほど近い井筒町で、84年間に渡り営業を続ける老舗旅館「松井本館」の若女将、松井もも加氏。松井本館では、玄関脇の看板に「空間分煙」のステッカー(「完全禁煙」は建物内で喫煙と禁煙のエリアが壁等で区切られている必要があるため、大半の宿泊施設は分類上「空間分煙」表示となる)が掲示され、ロビーは完全禁煙。玄関を出て脇にそれた奥まった場所に、縁側風に設えられた雰囲気の良い喫煙所が設置されている。

japan161017-4b.jpg

一般客の通らない場所に設置された松井本館の喫煙所(撮影:大村 享)

「以前はすべての客室とロビーが喫煙可能だったが、3年前のリニューアルを機に館内を分煙化した」と、松井氏。「本館全27室中、バリアフリーの特別室1室を完全禁煙としている。また、喫煙可能なその他の部屋にも強力なイオン空気清浄機を設置し、香を焚くなどにおい対策には気を配っているため、においに関するクレームはほぼない」

 将来的には喫煙と禁煙をフロア単位で分けることも検討しているという。老舗旅館にしてここまで分煙化を進める理由とは何なのか。

「分煙化は時代の流れであり、インバウンドが増加した昨今ではどの旅館でも当たり前の対策だと思う。そもそも、1年を通して国内外からのお客様がいらっしゃる京都の旅館は、総じて"おもてなし"への意識が高く、そのための努力を惜しまない。喫煙の有無を問わず、お客様には気持ちよくお過ごしいただくのが一番大切。そのために有効に機能するならばと、協議会のステッカーも喜んで掲示させてもらった」(松井氏)

japan161017-5.jpg

「京都の旅館は、総じて"おもてなし"への意識が高く、そのための努力を惜しまない」と、松井本館の若女将、松井もも加氏(撮影:大村 享)

 率直なところ、今夏の取材当時はまだ、京都市内を歩いていても店頭表示ステッカーを見受ける機会は少なかった。まだまだ道半ばなのだろう。この先どれだけ掲示店舗を増やしていけるのか。

 協議会の南部氏によれば、1年後のステッカー掲示率の目標は市内飲食店の50%以上。「京都市の半数以上の店舗がステッカーを掲示すれば、それがさらなる波及効果をもたらし、以降、京都市以外の地区にも展開しやすくなる」と期待を寄せている。

 観光都市としての"おもてなし"意識を背景に持つモデル事業だけに、全国の他の自治体も期待を持って見守っているはずだ。


japana_banner500-4.jpg

japan_banner500-3.jpg

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-〔マクロスコープ〕花見予算1割減、高まる「生

ワールド

NATO、ウクライナ支援の米兵器「全て引き渡し」 

ビジネス

米国株式市場=急落、ナスダック調整入り 中東情勢巡

ビジネス

原油150ドル超を見込むオプション取引活発化、ホル
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 5
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 6
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 7
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中