最新記事
シリーズ日本再発見

何時間でも思い出に浸れる、90年の放送史を詰め込んだミュージアム

2016年09月16日(金)11時12分
長嶺超輝(ライター)

 そこから2階へ上がると「テレビドラマの世界」コーナー。待ち受けるのは、懐かしい街並みのジオラマセットである。2012年上半期に放映された朝の連続テレビ小説『梅ちゃん先生』のタイトルバックで使われたものだ。

 壁面に目を向けると、朝ドラと大河ドラマの歴代ポストカードがびっしりと貼られている。モニターでは年代別でドラマを検索してダイジェスト映像を観ることもできるので、視聴しながら当時の思い出が脳裏に浮かんでくる方も多いのではないか。

 なかでも、不朽の名作と名高い『おしん』は世界各国で放映され、古き良き日本の文化や国民性を海外へ広める役割に大きく貢献したのはご存知の通りである。

japan160916-2.jpg

歴代の朝の連続テレビ小説(手前)と大河ドラマ(奥)のダイジェスト映像を、それぞれ真ん中のモニターで自由に鑑賞できる。NHKドラマ好きなら、ここだけでかなりの時間を過ごせそう

 その隣に設置してあるのは、大河ドラマの衣装に画面上で自由に着替えられる『バーチャル・フィッティング』である。センサーが利用者の身長や動きなどを自動的に検知して、合成される仮想衣装の大きさも調整されるので、子どもにも大人にも人気のアトラクションだ。

 さらに奥へ進むと、リニューアル前から多くの来館者に根強く支持されている紅白歌合戦コーナーや、「にこにこぷん」や「ひょっこりひょうたん島」など、こども番組の懐かしい人気キャラクターの実物が展示されているエリアもある。

「玉音盤」まである日本放送史コレクション

 ポップな雰囲気の2階に別れを告げて、3階へ上がると、一気に博物館らしいアカデミックな空気が漂う。数多くの貴重な資料や機材が並ぶ「ヒストリーゾーン」である。年季の入ったラジオマイクや受信機、世界初のブラウン管実験の再現、テレビ放送初期の巨大なカメラ機材など、時代の流れを引っ張り、ときに寄り添ってきた放送史の足跡を感じさせる展示物が、通路の両脇で静かに来館者を待ち受ける。

japan160916-3.jpg

3階「ヒストリーゾーン」内の「テレビの実験時代」コーナー(左側)。放送の主役がラジオからテレビへ急速に移行していく頃の貴重なカメラや受像器が展示されている

 注目すべきは、「戦時下の放送」コーナーに鎮座する「玉音盤」である。ポツダム宣言の受諾を告げる昭和天皇の玉音(終戦詔書の朗読)を収録したレコードの実物で、放送前日の8月14日深夜に宮内庁で収録された。この玉音盤のラジオ放送を阻止しようと、陸軍の一部によるクーデター未遂事件(宮城事件)も起きた。日本の命運に大きなくさびを打ち込んだ円盤を目の当たりにすることができる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中