コラム

人口減少と減原発と紳助引退と

2011年08月25日(木)18時29分

 ニューズウィーク今週号の特集は、「先進国になれない中国」。中国の成長の限界を「人口減少」の観点から分析。これまであまり注目されてこなかった視点なので是非ご一読を!

 人口減少といえば、少子高齢化の道を進む日本も同じ。そしてこれもあまり語られていないが、この人口減少によって、数十年単位の長い目で見れば将来の電力消費量も減少すると見られている。つまり何もしなくても自然と節電になるわけ。とはいえ、脱原発を目指すなら、やはり「節電努力」は欠かせない。この夏の節電努力を「節電ブーム」で終わらせることなく、(無理のない範囲で)定着させていかないといけない。

 経済界からは「生産力が落ちる」「産業の空洞化が起きる」と反発の声があるが、この夏の15%節電で本当にどれだけの影響があったのか検証されるべきだろう。これまで使い放題だったところのムダを省いただけで、そこそこの節電はできたのでは? 狭い話になってしまうが、震災から3カ月もたたないうちに、会社の最寄り駅の近くに新しいコンビニがまた開店した。いま駅から会社までの道のりにコンビニが5軒。これって全部必要なのか? 家の近くのスーパーは去年あたりから24時間営業に切り替えた。午後9時以降は、「いらっしゃいませ、ありがとうございました」と反復するテープをず~っと流している。夜中は店員が少なくなるから、その代わりなんだろうけど、そんな過剰サービスいらない。ムダだ。

 脱原発といえば、政府の方針では脱原発ではなく、「脱原発依存」あるいは「減原発」というネーミングらしい。正直、どう違うのかよく分からない。どうやら「脱原発」というと「原発ゼロ」ありき、または原発を一気に止めてしまうと捉えられそうだから使いたくないらしい。だが「脱原発=すべての原発即時停止」ではないことぐらい、大半の国民が理解していると思うが。

 確かに「減原発」のほうが、少しでも原発存続のニュアンスを残せるのかもしれない。でも減原発とは原発を増やさないという方針。というか、福島第一の事故後の日本で原発の新増設は見込めないだろう。そして、そのうち寿命を迎えた原発は次々に停止し、最後にはゼロになる=脱原発。原発からの脱却は現実なのではないか。

 いや、もしかしたら「減原発」と呼ぶことで、もっと大きな可能性を残そうとしているのかもしれない。例えば、原発立地自治体への交付金の増額で、まだ新増設を狙っているとか? 核のゴミが増えてもモンゴルに押し付ける算段だから大丈夫とか? 

 いずれにしても、民主党代表選の候補者たちからエネルギー政策は聞こえてこない。聞こえてきたとしても党内や産業界もろもろを意識して玉虫色に逃げているようにみえる。

 さて民主党代表選といえば、もともと盛り上がりに欠けていたが、島田紳助引退のニュースで、さらに吹っ飛んだ感がある。暴力団との交際の親密度がどれぐらいだったのかは分からない。ただテレビの中だけの紳助を語るなら、やはり大きな存在だった。

 自身の冠番組にはなるべく若手芸人(年齢的にはもう中堅どころだが)を出してイジり、若手それぞれの良さを引き出してあげていたと思う。結局、最後には紳助がおいしいところを持っていくことも多々あったが、彼のアシストがなかったら一発屋で終わっていた芸人は少なくないだろう。

 『M-1グランプリ』も良かった。第1回の優勝者、中川家。第2回、ますだおかだ。上方の正統派漫才師の実力を東京(全国)に見せてくれた。第7回大会、サンドウィッチマンの敗者復活劇もドラマだった(個人的に2本目のネタはトータルテンポスのほうが飛ばしてたと思うが)。 『爆笑レッドカーペット』など持ち時間の短い一発芸的なネタ見せ番組が流行っていたなか、漫才の面白さを改めて教えてくれたと思う。

 たしか一昨年の『FNS27時間テレビ』。深夜のコーナー「さんま・中居の今夜も眠れない」に紳助が出ていたのを覚えている。1時間ぐらいだっただろうか。さんまと紳助の絶妙トークに、涙が出るほど笑わせてもらった。しゃべりの内容は、しょうもない話。まだ2人が売れなかった頃、一緒に営業に行ったときの話とか、2人が同じ女と付き合ってたことがあるとか。コーナーそっちのけで、しょうもない話なんだが、さんまと紳助の話術とテンポ、間(ま)と掛け合いだけで十分。正直、ときどき合いの手を入れる中居クンが邪魔だった。ちなみにこれ、27時間テレビだからもちろん生。編集で面白いところだけつないだわけではない。

 もう1回ぐらい、さんま・紳助の共演が見たかった。

──編集部・中村美鈴

このブログの他の記事も読む


プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

和平計画、ウクライナと欧州が関与すべきとEU外相

ビジネス

ECB利下げ、大幅な見通しの変化必要=アイルランド

ワールド

台湾輸出受注、10カ月連続増 年間で7000億ドル

ワールド

中国、日本が「間違った」道を進み続けるなら必要な措
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 8
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 9
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story