コラム

恋の悩みはジュリエットに相談?

2011年02月16日(水)08時00分

 2月14日のバレンタインデー、みなさんはどう過ごされただろうか。毎年恒例だが、街を挙げてロマンチックに盛り上がったのがイタリア北部のベローナだ。

 「ベローナ・イン・ラブ」と銘打ち、街の広場には巨大なハートが現れ、街のシンボルであるランベルティの塔は真っ赤にライトアップされ、「アモーレ満載」のイベントやコンサートが開催された。というのもここは『ロミオとジュリエット』の舞台となった「愛の都」だから。地元当局もそのイメージ作りに力を入れているようだ。

 ジュリエットのモデルである娘の家(カプレティ家)は一般公開されており、有名なバルコニーやジュリエット像の前は多くの観光客でにぎわっている。この家に世界各国から、毎年5000通ものジュリエット宛ての手紙が届くのをご存知だろうか?

 そのほとんどが恋の悩みをつづっているのは予想通りとして、その一通一通に「ジュリエットの秘書」たちが返事を書いている、というのが面白い。イタリア語はもちろん英語やドイツ語、フランス語、スペイン語、日本語などに堪能なボランティアの女性たちが、すべての手紙と電子メールに返答しているという。彼女たちが属しているのは、市の援助を受ける「ジュリエットクラブ」という団体だ。

 そして毎年バレンタインデーには、1年間で最も魅力的な手紙に「Dear ジュリエット賞」が与えられる。手紙の中でどれだけ自分の感情を素直に表現したか、ジュリエットにどれほど親愛の情を抱いているかが評価されるそうだ。今年の受賞者は、イタリア人のバレンティーナ・ズィロッチ(19)、イギリス人のサラ・ジョージ(21)、アメリカ人のベス・ギレスピー(28)だった(下写真は受賞者3人と、ジュリエット宛てに届いた手紙)。

 「彼と出会ってから、彼のことを思わない時間は1時間もなかった。これっておかしい?」と書くギレスピーは、ニューヨークを離れてスペインで暮らそうかと考えているという。世界を知りたいし、新しい人々とも出会いたい。でもそれをいやがる母を置いてはいけない。私は長女だし......それにあなたも察している通り、ヨーロッパに行きたい大きな理由はイギリスにいる彼に近づけることだから......。

DSC01310_renamed_5868[1].jpg DSC01202_renamed_13048[1].jpg


 こんな手紙のやり取りを題材にしたのが、5月に日本公開される映画『ジュリエットからの手紙』(下写真)。ベローナを出発点としたクレア(バネッサ・レッドグレーブ)の初恋を探す旅、そしてソフィ(アマンダ・セイフライド)の現在進行形の恋が描かれる。

juliet_main[1].jpg

©2010 Summit Entertainment,LLC.All Rights Reserved.

 初恋探しなんて甘ったるい感傷といえなくもないし、結末が読めそうな展開であるのは確か。でも、イタリアの美しい景色と物語の軽快なテンポは心地よく、初夏の風のようにさわやかな作品だ。ソフィ役のセイフライドも、彼女に反発しながら引かれていくチャーリー役のクリストファー・イーガンも日本ではまだそれほど知名度が高くない。だからこそこの作品にはぴったり。

 かつて真実の愛と感じた愛なら、遅すぎることはありません――劇中、ソフィがジュリエットの秘書となってクレアに書いた手紙の言葉に素直にうなずけるのは、レッドグレーブのチャーミングさゆえか。

 ところで映画の冒頭、ジュリエット像の右胸に触れて写真を取る観光客の男性を見て「なんだ、あのエロオヤジは?」と思った――が、胸に触ると幸せになるとか、恋が成就するとかいう言い伝えがあるそうだ。

 恋に悩めるみなさんもジュリエットにアドバイスを求めてみては?


――編集部・大橋希

このブログの他の記事も読む


プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story